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令和元年度第4回上海・重慶医療調査・交流

今回は、中国の透析患者事情を調査するために、まず、上海で医療ツーリズムを手掛ける会社や上海最も有名な上海交通大学附属病院である瑞金医院を訪問調査を行い、その後、内陸の人口が集中している中国の中央政府の直轄市である重慶を訪問した。重慶市にある医薬関連会社である重慶医薬集団颐和健康産業有限公司を訪問した。該会社は、国有企業「重慶医化集団」の子会社であり、健康産業を手掛けている会社である。今後、透析患者の誘導において意見交換や可能性について調査を行う目的であった。

1.先邦健康管理有限公司

これまで沖縄にも検診の患者を送り出している会社である。この会社は検診を専門的に行なっている会社でいくつかの検診センターを運営している。海外への検診目的の受診者の送り出しも行なっている。やはり人気が高い所といえば東京、大阪などの大都市であるそうだ。最近はあまり高額な検診は少なく、日本国内と大差ない料金体系になっている様です。また治療目的の患者の送り出しも行なっており、その内容としては、ほとんどがガン治療のようだ。大阪重粒子線治療センター、そして大阪癌センターとは業務提携を結び、そこでの治療を希望する患者さんには、患者さんの画像情報などを前もって日本に転送し、治療可能かどうかのある程度の診断をした上で日本にわたってもらうことにしているとのこと。やはり、高度に癌が進行している場合には、治療不可との診断になることもあるとのことであった。

今回の訪問目的や本事業の内容を説明を行い、今後の連携可能性について議論を行った。現在、透析患者を海外に送るケースは、まだ行っていないとのことであったが、我々の事業内容に対して非常に興味を示してくれた。今後、情報を交換しながら、試しにモデルケースとして実施してみたいという話をいただいた。

先邦健康管理有限公司ロビーにて     事業について議論

2.上海四維医学科技有限公司

上海四維医学科技有限公司を訪問した。この会社は、上海交通大学関連のベンチャー企業で検診や検査の遠隔診断を行なっていた。

一般的な検診結果の読影は病院の中で通常業務で行なっている。それ以外に心電図検査では、契約病院が心電図検査を行うと、そのデータがインターネットを介して送られ、診断医師が即に診断し、その報告書をネットを介して送るというサービスを行なっていた。契約している医療機関が1200で、上海を中心に中国全体に及んでいるとのことであった。次第に契約件数が増えているとのことであった。最近は臨床例にも利用されていて、特に夜間の救急病院で利用されているとの事であった。夜間は、医療従事者は忙しいので、画像の読影や心電図の診断は、病院で重宝されて次第に契約件数が伸びて来ていて年間460万件の検査結果の遠隔診断を行なっている。

モニターは、現在遠隔診断の数字をリアル的に表示されており、各担当医の診断件数を一括管理している。

3.上海瑞金病院

また、日本との医療ツーリズムも盛んに行い、大阪の重粒子線治療センター及び癌センターとは専属契約を行い、中国の患者のやり取りはこの会社が行なっているとの事、この会社を通して主治医の情報のやりとりを行なっているそうである。検診に関しては、胃カメラ大腸ファイバー検査、及びPETを組み合わせた検診が、人気があるとのことである。

 

調査の翌日午後に、上海交通大学の附属瑞金病院の訪問視察を行なった。上海瑞金病院は、現在では上海交通大学医学院の基幹関連病院としての役割を果たしている。総ベッド数が2100床の総合病院で、3900人の職員(うち医師が990人以上)が働いている。上海の中心地に位置しており、45専門分野を持つ有名な総合病院である。

その中で、腎臓内科の医師28人、80床を運用している。視察しその後カンファレンスを行った。瑞金病院の透析患者数は、 血液透析 300人 腹膜透析患者 300人 と透析ベッドの数は80床で、1日3交代で透析治療を行い、300人の血液透析患者の透析治療を行い、また腹膜透析も300人おり、月1回の外来通院治療を行なっているとのことであった。

 

上海には透析患者が約15000人いて、血液透析 10000人 腹膜透析患者 5000人とのこと、最近では腹膜透析を導入する患者が増えて来ているそうだ。

中国全体で最近血液透析患者の登録制度が施行されてきて、2019年現在、登録されている透析患者は60万人 しかしこれまで登録されていない患者がいると考えられるので、来年には70万人、あるいは80万人になるかもしれないとのこと。上海市の人口は2600万人で、台湾が人口2300万人で透析患者は、約8万人いることを考えると、上海市の透析患者15000人は少な過ぎる感じがする。登録制度がもっと進めば、やはり台湾と同じ程度の患者になるのではないかと考えられた。

瑞金病院では、カンファレンスルームで、まず准教授の先生から瑞金病院での透析治療の現状について、プレゼンテーションが行われ、それに引き続き、井関先生がKDIGOにおけるガイドライン作りの内情などが報告され、世界にまたがる場合、ヨーロッパとアジアでは人種が異なるため、ガイドラインも一つで当てはめるのは困難との事であった。次に、SORAアカデミーサポートから、今回のプロジェクトの内容に関して説明を行った。

世界の透析事情の紹介      本プロジェクトの説明

 

その後、今回の透析患者誘導についてのプレゼンテーション後の議論を行われた。

主任教授陳楠先生からも非常に素晴らしい取り組みだとのお言葉を頂いた。これまで透析患者は、透析治療という制約から、自宅と病院だけの往復という生活を余儀なくされていた。しかし生活習慣病治療、あるいは腎臓病治療という観点からも、運動療法は非常に有効な治療であり、透析患者にもそれは当てはまる。そのため中国では最近から透析患者にまず国内旅行を進める取組みをしているところであり、それが外国に広がるにしても、今回の取り組みの様に、医療従事者に語学教育を行いながら、主治医との連携も取りながら、透析治療のサポートをしてくれる組織があれば、患者は、安心して海外にも旅行できる。非常に良い取り組みであると高く評価をいただいた。特に今回のプロジェクトが、1医療機関の企業ベースの取り組みではなくて、沖縄県が支援を受けて行われているということであれば、病院としても、患者や周りの医療機関にも周知しやすいとのことを教えていただいた。

 

院内紹介、視察が行われ、特に内科病棟、血液透析室、および腹膜透析室を案内して頂いた。

上海医療関係者、日本の製薬メーカー交流会

上海瑞金医院透析センター

4.重鋼総医院

二日目に訪問したところは、重慶市にある医薬関連会社である重慶医薬集団颐和健康産業有限公司を訪問した。該会社は、国有企業「重慶医化集団」の子会社であり、健康産業を手掛けている会社である。

重慶医化集団は薬の流通では中国で6番目の規模を誇り、西地区ではトップとのことであった。しかし薬の流通だけでは今後なかなか経営的に厳しくなるとのことで、現在、病院2つを買収して医療と健康産業に力を入れることとなっている。その中、今回訪問した「重鋼総医院」は1000床で重慶の中では2級病院とのこと。中国ではレベルの高い病院は3級病院となり、その次に2級、1級となるそうだ。実際に救急室を見学したが、1000床の病院としては、日本と比較して設備が少ないように見えた。透析室も28床あり、患者は80人程度で、通常2クールで対応されて、一部は、3クールで透析治療を行っているとのこと。

また、ICUなども入ることができ、中国内陸の医療状況を見ることができた。ICU見学ごに休憩室でICUの主任先生と意見交換を行った。

重鋼総医院ICUにて        ICU先生方と意見交換

 

病院見学を終えてミーティングルームで今回の訪問目的などを説明する機会をいただいた。その際に、病院等の他にこの地区の党の書記長なる人物が参加し。院長よりも権限があるとのことで中国の体制的なものが伝わってくる。また、病院のすぐ隣に廃止された商業モールがあり、このグループがこの施設も買い取りアメニテイーの高い医療施設を作る計画をしているようで、その中の目玉は「再生医療」とのことで、何処からその技術を導入するか聞いたが、明確には答えてくれなかった。今後、各面での交流・連携を図ることが確認できた。

重鋼総医院ミーティング

 

5.四联優侍養老産業有限公司(老健施設見学)

重慶市から車で、1時間ほど郊外に進めた場所にその介護施設はあった。もともと、市の土地でメーター製造工場などがあった地域であったが、それらの工場が廃業となったために、土地と建物の有効利用するために、この有限公司が払い下げを受けて介護施設を作ったようであった。もともと自然豊かな地域だが、その中でも川沿いに面し、約1万坪の敷地の中に、居住区としての建物やリハビリ施設、医療施設が別建物にあり、その間は木々に覆われて、非常に心落ち着く配置になっていた。

まず玄関ロビーに入ると、この施設のミニチュアが作られており、全体像が理解できた。

優侍養老産設の外観             優侍養老産業施設の説明を受ける

 

居住区のメインの建物は5階建ての洒落た建物で、真ん中は大きな吹き抜けになっており、夏は涼しく、冬は床暖房が設置されているので暖かいそうだ。我々が訪問した時には、20人ぐらいの高齢者がその吹き抜けの中で、誰かの話を聞いていた。何の話をしているかと尋ねると、「党の時間」で中国共産党が現在進めている政治的な政策などを分かり易く解説して話をしているとのことであった。

広い多目的ホールで高齢者が勉強会を開いた

 

居住区に中には、それぞれの部屋があり、一人部屋、二人部屋、三人部屋があり、また部屋のベッドの枕元には病院と同じように酸素と吸引の配管がされており救急の場合にも部屋で対応できる作りとなっている。また、居住者は、入居の時にネームバンドが配布され、そしてそれにはGPS機能が設定され3Dで位置情報が確認できるので、迷ってどこかの建物に紛れ込んでも、すぐに分かるそうである。

 広大の敷地内にリハビリテーションセンターや外来機能を持つクリニックなども充実している。さらに、中国特有の太極拳なども朝のリハビリに取り入れているとのこと。

優侍リハビリテーションセンター          敷地の段差を利用した滝の前

 

現在この施設への入居者は400人で今後1000人まで増やしていきたいとのことであった。また入居費用は5000元~10000元、日本円に換算すると7万円~15万円程度になる。やはり、重慶市でも高額所得者が入居しているらしい。入居者のこれまでの職業を聞いてみると、大学教授、パイロット、医師など高学歴者が入っている様子。日本の場合、この様な介護施設は市町村に設置認可の権限があり、そしてその地域に必要な人数だけを認可する仕組みになっているので、ここの施設のように400人などの規模は建設が不可能である。中国では、入居する立場で考えるとこの様な、充実した施設も建築できるような取組みも可能であったことに驚いた。

 

最後に、市内を少し回ってみると、揚子江に面した市内は、兎に角とてつもなく数多くの高層ビル(多分居住用)と商業用と思われるビル群が数多く見えた。また、その近くで高速道路の工事が今でも行われており、我々が訪問した地域はほぼ、道路の舗装や建物の建築は一通り済んでいるが、さらに高速道路やビル建築している様子を見ると、中国のGDPはこれらの内需だけでも、まだ今後10年近くは進むのではないかと思われた。重慶市は人口1000万人、そのしゅうへんを含めると3000万人になるそうだ。四川省だけで一億人、この国の大きさを実感した。これから、透析患者も増える一方で、我々もその受入れ準備に備えないと対応できないと考えた。