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令和元年度第3回香港・シンガポール医療調査・交流

今回は、香港、およびシンガポールの透析患者事情を調査するために、まず、香港中文大学の関連病院であるプリンスオブウェールズ病院のDr. Philip Liを訪問することと、シンガポールの国立シンガポール大学病院の腎臓科準教授のDr Jimmy Teo先生を訪問しシンガポールの透析患者事情及び沖縄への透析患者誘導の可能性を依頼することが大きな目的である。

1.香港中文大学:プリンスオブウェールズ病院(沙田威爾斯親王醫院)

調査日の当日は、香港では空港を中心にストライキが行われており、街中は喧噪としており、不穏な雰囲気が街中を取り巻いている。そのような状況下で病院を訪問した。Dr. Philip Li MC Law教授は香港中文大学医学部の関連病院であるプリンスオブウェールズ病院の腎臓科の主任教授である。香港には、医学部として香港大学と香港中文大学の二つに医学部があった。同病院のベッド数は1800床である。また、現在、大規模の大学附属病院が建築中とのことであった。

プリンスオブウェールズ病院のDr. Philip Li MC  Lawのofficeで、今回の訪問趣旨を説明した。そして、香港の透析患者状況についてヒアリングを行った。

現在、香港は、人口は700万人程度だが、透析患者が4500人ほどいる。その中で腹膜透析が4000人、90%程度が腹膜透析を行っている。また同病院には400人程度の透析患者がいて260人に腹膜透析が行われているそうである。

事業の説明

腹膜透析室の見学  香港の透析患者状況の確認

 

今回の訪問は、香港の大規模デモという厳しい状況の中に行われたが、世界において腎臓科の医師として有名なDr. Philip Liを始め、スタッフが心地よい受け入れてくれおり、必要な情報を確認できた。その上、本事業の目的をよく理解していただいた。情勢を見ながら透析患者へ情報を伝達することとなった。

2.National University Hospital(シンガポール大学医学部付属病院)

シンガポールにある名門のシンガポール大学の医学部付属病院を訪問した。

NUHはNational University Hospitalの略で、シンガポール大学は、大学ランキングでアジアの中でトップクラスの大学である。日本の東京大学が8位であるので、如何にレベルの高い大学であるかが伺える。今回、腎臓科准教授のDr Jimmy Teo先生を訪ねた。

まず指定された医学部の建物に入ると近代的な内装が施されたロビーでそこにNUH(National University Hospital)の標識が非常に格調高く感じられた。喧騒としたシンガポールの中で、医学部の建物の中は、広々としていて静寂で威厳を感じた。

シンガポール大学附属病院ホールにて

会議室で腎臓科准教授のDr. Jimmy Teo先生に今回のシンガポール訪問の趣旨を説明し協力を要請した。訪問前に、事業についてDr. Jimmyに情報をお伝えした部分もあり、内容をよく把握していただいた。その上、関連部署である血液透析や腹膜透析部署の見学など手配していただいた。

シンガポール大学附属病院医局オフィスにて事業説明

オフィスで事業を説明後、病院を案内していただいた。医学部から病院には建物が別になっているので敷地内を移動したが、2回以上で長い渡り廊下を渡りながら、大学病院の全体を見ることができた。

シンガポール大学は、イギリスの植民地下で1905年に設立した大学であり、現在3つもキャンパスがある。NUHは、中心となるのがケントリッジキャンパスにある。ほとんどの大学の施設はこのキャンパスに集まっているため、かなりの広さで、キャンパス内を移動するにはシャトルバスを利用するようだ。

病院の渡り廊下から見た病院敷地が非常に広い

 最初に案内されたNUHの腎臓センターであった。当日、Dr Jimmy Teo以外に血液透析の医師や腹膜透析の担当医Dr Titus Lauや Dr Sabrina Haroonが同行されており、それぞれの部署の詳しい説明は、現場の責任者が行っていただいた。Dr Jimmy Teoの周到の手配に感謝。

透析センター及び透析患者状況の説明を受ける(井関邦敏 左写真 左1)

シンガポールは人口が561万人で、その中に約6000人の透析患者がいてその内、約10~15%が腹膜透析とのことであった。NUHには、約200人の透析患者がいてその内40人が腹膜透析が行われている。また、使っている透析液の型番や透析液のコネクターも見せていただき、コネクターの見本までいただいた。今後、シンガポールの透析患者の受入れに非常に役立っている。

腹膜透析専門看護師:NUHにおける腹膜透析のやり方を示してくれた(左写真)

    実際使われた透析液を見せていだいた(右写真)

 

病院の中を見学した後、建物の屋上に案内された。非常に見晴らしの良いところで、最上階は事務になっていて職員のためのスペースらしい。職員も、健康管理に気を付け大学も敷地の中にジムを設けて職員に開放している。さらに驚いた事は、屋上は、バーベキューなどもできるような構造になっていて週末ともなると職員の利用者が増えるそうである。福利厚生においても非常に素晴らしい大学であると感じた。

その後、透析センターと少し離れた病院の外来棟の見学となり、外来は、ホテルのような診察待ち相室があり、入り口には、担当医の名前の案内板がありました。

NUH外来担当医の案内板

 

病院の外来棟を階上から見ると病院の高層ビルと低層ビルをバランスよく配置し、シンガポールらしくみどりの街並と調和している。また、実際に外来に降りてみると、そこは地下鉄の駅と連結し、色々なお店もあり、非常に便利なつくりとなっていた。

 

病院の見学後、地下鉄で移動し、昼食ミーティング会場へ移動した。ミーティングには、腹膜透析の透析液の製造販売メーカー(FRESENIUS MEDICAL CARE)の担当者も含めて議論した。

FRESENIUS(フレゼニウス)は、ドイツに本社を置く、歴史は古く1462年に発足したヒルシュ薬局にさかのぼる。1743年、フレゼニウス家がヒルシュ薬局の経営権を取得し、フレゼニウスグループの礎を築きた。1912年にはエドワード・フレゼニウス博士が研究所を発展させ、薬の製造を開始(従業員数400名)。さらに、透析装置とダイアライザーの代理店へと事業拡張を進め、1979年には透析装置の自社生産を開始した。

1996年9月には、革新的製品の開発と生産に従事してきたフレゼニウス社透析部門と米国の大手透析センターであるナショナル メディカル ケア社を合併し、フレゼニウス メディカル ケアAGを設立しました。現在フレゼニウス メディカル ケア グループ は、世界的なリーナルケアのリーディングカンパニーとして多岐にわたる業務を展開している。(フレゼニウス メディカル ケア ジャパンより参照)

 

議論を通して透析液は、シンガポールから日本に旅行で来ても全く問題なく使用できる透析液もあれば、コネクターが異なり注意を要するメーカーもあることがわかった。また、シンガポールは、台湾や香港地域のような患者会がなく、製薬メーカーが患者の海外旅行をサポートしていることも分かった。

さらに、今回の事業内容をプレゼンができたことや今後メーカーの協力をいただけることを確認ができ、今回の訪問の大きな収穫となった。

昼食ミーティング際のプレゼン様子