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令和元年度第2回台湾医療調査・交流

昨年提携した台北市立聯合病院を再度訪問し、該病院が取り込んでいる在宅医療やコニュニティーを視察することで、今後沖縄との交流を深めたいと同時に、本事業の目的を説明する。また、新たな病院や透析協会を訪問し、沖縄で透析旅行を体験したい患者への情報発信や、受入れの現地窓口になっていただくことも今回の訪問目的でもあった。

1.台北市立聯合醫院仁愛院區

昨年度、台北市立聯合病院で沖縄からの医療中国語受講生の現場実習を受け入れて頂き、またその時に「沖縄国際医療推進協会」とMOUを締結して、人材育成や臨床研究など相互交流が可能な状態となっている。今回は、透析患者の調査を含めて、台北市における高齢者医療、在宅医療などを視察する目的で同病院及び関連する施設、在宅医療センターや、そこで行われている実際の在宅医療などを視察させていただいた。

台北市立聯合病院は7つの総合病院よりなり、今回訪問した仁愛病院はその中でも中心的な急性期病院である。日本では急性期病院が在宅医療まで行っているのは考えにくいことではあるが、台湾では、まだ在宅医療が制度的に地域まで浸透しているわけではなく、台北市立聯合病院が、政策医療として、中心的に役割を担っている状況である。

 

仁愛病院に到着すると、蕭勝煌院區院長、陳淑廷醫務長、朱彩鳳主任、劉嘉仁特助、謝明軒主任らが玄関で出迎えてくれ、早速、透析室(3F)だけでなく、緩和病房(南棟3F)や緩和ケア・仁鶴軒(5F)などを案内して頂いた。

 

認知症ケアセンター

内装の折り畳み式簡易ベッド:普段はソファーとして使うが、認知症の患者さんは高齢で、体力的にも弱者なので、疲れた時には、すぐに休めるように、ソファーが、伸ばすとすぐに簡易ベッドになり、横になって休むことができる。

 

 蕭勝煌院長との交流ミーティング

仁愛病院における急性期医療から、高齢者介護、認知症ケア、在宅医療まで、台北市の基幹病院として果たしている役割についての説明などが行われた。

また、今回の訪問目的も説明をさせていただいた。

緩和ケア仁鶴軒の見学

2.士林慈悲關懷社區參訪 (士林神農宮)

士林神農宮は台北市にある地域信仰のお寺で、農業の神様を祭っているお寺である。台湾は地域信仰が盛んで、地域ごとの土着の神様を祭ったお寺が多数あり、周辺の住民はそれらをよく訪れる。今回は、その士林区にある高齢者コミュニティ拠点ともなっている神農宮を訪問した。神農は、農業の神様であり、薬草を食べていた伝説から薬の神様でもあることから薬の神様となったため、神農宮は病気平癒やケガ回復など健康のご利益があるところとなった。

神農宮は、現在、士林区の高齢者コミュニティの拠点となっている。

 

日本でお寺と言うと、葬式の時しか縁がないが、台湾のお寺は、土着の宗教のご神体があり、必ずしも仏教というわけではない。ここのご神体も左図の様に、形のある農業の神様で、住民はよく訪れ加護を祈る。

 

信仰心が厚い国民性がある。台北市立病院総院長の黄勝堅先生は、地域高齢者の拠点として、これらの地域信仰のお寺に目をつけ、これら地域のコミュニテイを中心に高齢者ケア拠点として機能させてきている。なぜなら、この地域にどれだけの高齢者がいるのか、また、一人住まいで、認知症になっているとか、身体障害があり、外出もままならないとか、それらの情報はお寺を中心としたその地区の区長さんなどがよく把握されているので、その人たちと一緒になり、地域の高齢者医療を実践していく仕組みが作られている。

お寺に血圧計などが設置されており、IDを通した後血圧測定すると自動的に台北市立病院の電子カルテに記録され普段の血圧を知ることができる。

独居の高齢者には、栄養管理目的で月に2回食事会が行われ、それには台北市立病院の栄養士が栄養管理を行いフレイルの防止に努めている。

高齢者のフレイル予防のための食事会スペース:月2回行われ、健康管理や安否の確認など、コミュニティを中心に行われている。

延命治療や、自分の意思での終末期の選択など、日本ではまだ市民レベルまで周知されていない内容のことが、台北市ではすでにお寺の普段の活動の中に浸透していることが分かった。

また、お寺の中の集会所では、医療講演会もよく行われ、医学的な講演会や、終末期ケアの事、延命治療についてのことなどもよく行われているとの事だった。その集会所の壁には大きな張り紙でDNR(心肺蘇生拒絶)やACP(終末期の意思)のことが張り出されているのが印象的だった。

神農宮の何逸松理事(区長)取組みの紹介

このお寺の現在の役割について説明が行われた。まず、これまで単なるお寺であった士林神農宮が、台北市立聯合病院と協力関係を構築し、高齢者医療、終末期医療、在宅医療に深くかかわるようになってきて、さらにスムーズに運営できるようにするために、士林神農宮を財団法人にしたとの説明があり、その記念に立派な書が掲げられていた。いわゆる財団の理事長は、台北市立聯合病院の総院長の黄勝堅先生であった。

財団法人:2018年6月

台湾国際慈悲開懐社区発展協会

董事長:黄勝堅

 

大学生の地域高齢者見守り活動の紹介

 

また、在宅医療や高齢者見守り取組みは、台北市各地区の大学とも連携し、活動は、学生のフィールドワークともなっている。学生による今後の台湾における高齢者医療の方向性や現状などについての説明があった。台北市の特徴はこのように大学と一緒になって学問的な裏付けを持ちながら進めており、学生の研究対象にもなっており常に新しい施策が講じられていくのはそのような取り組みに負うところが大きいと感じた。

3.臺北市立聯合醫院長照大橋據點

在宅医療を実際に行っている現場を視察させていただいた。拠点病院-お寺-在宅医療拠点ケアが有機的につながり、スムーズに運営されている。

センターにおける説明のプレゼンテーション

実際に配置されているその地区の家庭医と一緒に在宅医療の現場を訪問

日本と同様に急激な高齢化を迎えることが示されている。この様に高齢者が急増した場合に、施設での対応では間に合わない。だから在宅医療が必要であると話す。日本より遅れているが、その時期になると日本よりも高齢化のスピードは速い。

台湾の人口の攻勢を示すグラフ

 

雙和醫院は創立されて、数年前に新築移転してきてこの地域での診療はまだ、日が浅いとの事。以前はもっと小さな病院であったが、新築移転を機に病床拡張子1584床に拡張したとの事。副院長の話では、以前の病床は500床程度で、その時には経営的に厳しかったとの事。病床拡張し、以前より経営的には改善した。その時に、500~600床規模の小規模病院では経営が厳しいという話をされた時に、今回一緒に同行している、前沖縄県医師会長が同行していたが沖縄では、500床、600床だと大型病院になるのだが、ここでは小規模病院扱いになるのかとびっくりしていた。いつも国外に出て感じるのだが、日本以外の病院は1000~2000床規模の病院が多く、それがほぼ一般的だが日本の場合200~300床規模が標準でそれ以上が大型病院と規定される。その違いに驚かされる。

林裕峰副院長が対応

 

台湾における透析患者の現状と、台灣腎臟病防治基金會の活動内容などを紹介して頂いた。台湾の北部地域すなわち台北市を含めて台湾のほぼ北半分を網羅する透析患者会(台灣腎臟病防治基金會)を組織して透析患者の治療以外に日常生活上の気を付けるべきことや、啓もう活動さらに社会性の向上のためにこの活動を、林副院長を中心に進めていた。この活動に対する資金的な補助は全く無く、すべて会員の会費や色々な品々の売り上げで賄われているとの事。全く敬服至極である。今回の我々のプロジェクトを説明すると、患者さんの為になる取り組みだと賛同して頂いた。そして、その基金会から患者さんに、この内容を患者に案内して頂き、台北市を中心とした北部地域の患者さんへの広報の取りまとめをして頂けることとなった。

血液透析と腹膜透析がありそれぞれの方法で行っている

当病院における腹膜透析の方法について現場の看護師から説明を受ける。