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令和元年度第4回上海・重慶医療調査・交流

今回は、中国の透析患者事情を調査するために、まず、上海で医療ツーリズムを手掛ける会社や上海最も有名な上海交通大学附属病院である瑞金医院を訪問調査を行い、その後、内陸の人口が集中している中国の中央政府の直轄市である重慶を訪問した。重慶市にある医薬関連会社である重慶医薬集団颐和健康産業有限公司を訪問した。該会社は、国有企業「重慶医化集団」の子会社であり、健康産業を手掛けている会社である。今後、透析患者の誘導において意見交換や可能性について調査を行う目的であった。

1.先邦健康管理有限公司

これまで沖縄にも検診の患者を送り出している会社である。この会社は検診を専門的に行なっている会社でいくつかの検診センターを運営している。海外への検診目的の受診者の送り出しも行なっている。やはり人気が高い所といえば東京、大阪などの大都市であるそうだ。最近はあまり高額な検診は少なく、日本国内と大差ない料金体系になっている様です。また治療目的の患者の送り出しも行なっており、その内容としては、ほとんどがガン治療のようだ。大阪重粒子線治療センター、そして大阪癌センターとは業務提携を結び、そこでの治療を希望する患者さんには、患者さんの画像情報などを前もって日本に転送し、治療可能かどうかのある程度の診断をした上で日本にわたってもらうことにしているとのこと。やはり、高度に癌が進行している場合には、治療不可との診断になることもあるとのことであった。

今回の訪問目的や本事業の内容を説明を行い、今後の連携可能性について議論を行った。現在、透析患者を海外に送るケースは、まだ行っていないとのことであったが、我々の事業内容に対して非常に興味を示してくれた。今後、情報を交換しながら、試しにモデルケースとして実施してみたいという話をいただいた。

先邦健康管理有限公司ロビーにて     事業について議論

2.上海四維医学科技有限公司

上海四維医学科技有限公司を訪問した。この会社は、上海交通大学関連のベンチャー企業で検診や検査の遠隔診断を行なっていた。

一般的な検診結果の読影は病院の中で通常業務で行なっている。それ以外に心電図検査では、契約病院が心電図検査を行うと、そのデータがインターネットを介して送られ、診断医師が即に診断し、その報告書をネットを介して送るというサービスを行なっていた。契約している医療機関が1200で、上海を中心に中国全体に及んでいるとのことであった。次第に契約件数が増えているとのことであった。最近は臨床例にも利用されていて、特に夜間の救急病院で利用されているとの事であった。夜間は、医療従事者は忙しいので、画像の読影や心電図の診断は、病院で重宝されて次第に契約件数が伸びて来ていて年間460万件の検査結果の遠隔診断を行なっている。

モニターは、現在遠隔診断の数字をリアル的に表示されており、各担当医の診断件数を一括管理している。

3.上海瑞金病院

また、日本との医療ツーリズムも盛んに行い、大阪の重粒子線治療センター及び癌センターとは専属契約を行い、中国の患者のやり取りはこの会社が行なっているとの事、この会社を通して主治医の情報のやりとりを行なっているそうである。検診に関しては、胃カメラ大腸ファイバー検査、及びPETを組み合わせた検診が、人気があるとのことである。

 

調査の翌日午後に、上海交通大学の附属瑞金病院の訪問視察を行なった。上海瑞金病院は、現在では上海交通大学医学院の基幹関連病院としての役割を果たしている。総ベッド数が2100床の総合病院で、3900人の職員(うち医師が990人以上)が働いている。上海の中心地に位置しており、45専門分野を持つ有名な総合病院である。

その中で、腎臓内科の医師28人、80床を運用している。視察しその後カンファレンスを行った。瑞金病院の透析患者数は、 血液透析 300人 腹膜透析患者 300人 と透析ベッドの数は80床で、1日3交代で透析治療を行い、300人の血液透析患者の透析治療を行い、また腹膜透析も300人おり、月1回の外来通院治療を行なっているとのことであった。

 

上海には透析患者が約15000人いて、血液透析 10000人 腹膜透析患者 5000人とのこと、最近では腹膜透析を導入する患者が増えて来ているそうだ。

中国全体で最近血液透析患者の登録制度が施行されてきて、2019年現在、登録されている透析患者は60万人 しかしこれまで登録されていない患者がいると考えられるので、来年には70万人、あるいは80万人になるかもしれないとのこと。上海市の人口は2600万人で、台湾が人口2300万人で透析患者は、約8万人いることを考えると、上海市の透析患者15000人は少な過ぎる感じがする。登録制度がもっと進めば、やはり台湾と同じ程度の患者になるのではないかと考えられた。

瑞金病院では、カンファレンスルームで、まず准教授の先生から瑞金病院での透析治療の現状について、プレゼンテーションが行われ、それに引き続き、井関先生がKDIGOにおけるガイドライン作りの内情などが報告され、世界にまたがる場合、ヨーロッパとアジアでは人種が異なるため、ガイドラインも一つで当てはめるのは困難との事であった。次に、SORAアカデミーサポートから、今回のプロジェクトの内容に関して説明を行った。

世界の透析事情の紹介      本プロジェクトの説明

 

その後、今回の透析患者誘導についてのプレゼンテーション後の議論を行われた。

主任教授陳楠先生からも非常に素晴らしい取り組みだとのお言葉を頂いた。これまで透析患者は、透析治療という制約から、自宅と病院だけの往復という生活を余儀なくされていた。しかし生活習慣病治療、あるいは腎臓病治療という観点からも、運動療法は非常に有効な治療であり、透析患者にもそれは当てはまる。そのため中国では最近から透析患者にまず国内旅行を進める取組みをしているところであり、それが外国に広がるにしても、今回の取り組みの様に、医療従事者に語学教育を行いながら、主治医との連携も取りながら、透析治療のサポートをしてくれる組織があれば、患者は、安心して海外にも旅行できる。非常に良い取り組みであると高く評価をいただいた。特に今回のプロジェクトが、1医療機関の企業ベースの取り組みではなくて、沖縄県が支援を受けて行われているということであれば、病院としても、患者や周りの医療機関にも周知しやすいとのことを教えていただいた。

 

院内紹介、視察が行われ、特に内科病棟、血液透析室、および腹膜透析室を案内して頂いた。

上海医療関係者、日本の製薬メーカー交流会

上海瑞金医院透析センター

4.重鋼総医院

二日目に訪問したところは、重慶市にある医薬関連会社である重慶医薬集団颐和健康産業有限公司を訪問した。該会社は、国有企業「重慶医化集団」の子会社であり、健康産業を手掛けている会社である。

重慶医化集団は薬の流通では中国で6番目の規模を誇り、西地区ではトップとのことであった。しかし薬の流通だけでは今後なかなか経営的に厳しくなるとのことで、現在、病院2つを買収して医療と健康産業に力を入れることとなっている。その中、今回訪問した「重鋼総医院」は1000床で重慶の中では2級病院とのこと。中国ではレベルの高い病院は3級病院となり、その次に2級、1級となるそうだ。実際に救急室を見学したが、1000床の病院としては、日本と比較して設備が少ないように見えた。透析室も28床あり、患者は80人程度で、通常2クールで対応されて、一部は、3クールで透析治療を行っているとのこと。

また、ICUなども入ることができ、中国内陸の医療状況を見ることができた。ICU見学ごに休憩室でICUの主任先生と意見交換を行った。

重鋼総医院ICUにて        ICU先生方と意見交換

 

病院見学を終えてミーティングルームで今回の訪問目的などを説明する機会をいただいた。その際に、病院等の他にこの地区の党の書記長なる人物が参加し。院長よりも権限があるとのことで中国の体制的なものが伝わってくる。また、病院のすぐ隣に廃止された商業モールがあり、このグループがこの施設も買い取りアメニテイーの高い医療施設を作る計画をしているようで、その中の目玉は「再生医療」とのことで、何処からその技術を導入するか聞いたが、明確には答えてくれなかった。今後、各面での交流・連携を図ることが確認できた。

重鋼総医院ミーティング

 

5.四联優侍養老産業有限公司(老健施設見学)

重慶市から車で、1時間ほど郊外に進めた場所にその介護施設はあった。もともと、市の土地でメーター製造工場などがあった地域であったが、それらの工場が廃業となったために、土地と建物の有効利用するために、この有限公司が払い下げを受けて介護施設を作ったようであった。もともと自然豊かな地域だが、その中でも川沿いに面し、約1万坪の敷地の中に、居住区としての建物やリハビリ施設、医療施設が別建物にあり、その間は木々に覆われて、非常に心落ち着く配置になっていた。

まず玄関ロビーに入ると、この施設のミニチュアが作られており、全体像が理解できた。

優侍養老産設の外観             優侍養老産業施設の説明を受ける

 

居住区のメインの建物は5階建ての洒落た建物で、真ん中は大きな吹き抜けになっており、夏は涼しく、冬は床暖房が設置されているので暖かいそうだ。我々が訪問した時には、20人ぐらいの高齢者がその吹き抜けの中で、誰かの話を聞いていた。何の話をしているかと尋ねると、「党の時間」で中国共産党が現在進めている政治的な政策などを分かり易く解説して話をしているとのことであった。

広い多目的ホールで高齢者が勉強会を開いた

 

居住区に中には、それぞれの部屋があり、一人部屋、二人部屋、三人部屋があり、また部屋のベッドの枕元には病院と同じように酸素と吸引の配管がされており救急の場合にも部屋で対応できる作りとなっている。また、居住者は、入居の時にネームバンドが配布され、そしてそれにはGPS機能が設定され3Dで位置情報が確認できるので、迷ってどこかの建物に紛れ込んでも、すぐに分かるそうである。

 広大の敷地内にリハビリテーションセンターや外来機能を持つクリニックなども充実している。さらに、中国特有の太極拳なども朝のリハビリに取り入れているとのこと。

優侍リハビリテーションセンター          敷地の段差を利用した滝の前

 

現在この施設への入居者は400人で今後1000人まで増やしていきたいとのことであった。また入居費用は5000元~10000元、日本円に換算すると7万円~15万円程度になる。やはり、重慶市でも高額所得者が入居しているらしい。入居者のこれまでの職業を聞いてみると、大学教授、パイロット、医師など高学歴者が入っている様子。日本の場合、この様な介護施設は市町村に設置認可の権限があり、そしてその地域に必要な人数だけを認可する仕組みになっているので、ここの施設のように400人などの規模は建設が不可能である。中国では、入居する立場で考えるとこの様な、充実した施設も建築できるような取組みも可能であったことに驚いた。

 

最後に、市内を少し回ってみると、揚子江に面した市内は、兎に角とてつもなく数多くの高層ビル(多分居住用)と商業用と思われるビル群が数多く見えた。また、その近くで高速道路の工事が今でも行われており、我々が訪問した地域はほぼ、道路の舗装や建物の建築は一通り済んでいるが、さらに高速道路やビル建築している様子を見ると、中国のGDPはこれらの内需だけでも、まだ今後10年近くは進むのではないかと思われた。重慶市は人口1000万人、そのしゅうへんを含めると3000万人になるそうだ。四川省だけで一億人、この国の大きさを実感した。これから、透析患者も増える一方で、我々もその受入れ準備に備えないと対応できないと考えた。


令和元年度第3回香港・シンガポール医療調査・交流

今回は、香港、およびシンガポールの透析患者事情を調査するために、まず、香港中文大学の関連病院であるプリンスオブウェールズ病院のDr. Philip Liを訪問することと、シンガポールの国立シンガポール大学病院の腎臓科準教授のDr Jimmy Teo先生を訪問しシンガポールの透析患者事情及び沖縄への透析患者誘導の可能性を依頼することが大きな目的である。

1.香港中文大学:プリンスオブウェールズ病院(沙田威爾斯親王醫院)

調査日の当日は、香港では空港を中心にストライキが行われており、街中は喧噪としており、不穏な雰囲気が街中を取り巻いている。そのような状況下で病院を訪問した。Dr. Philip Li MC Law教授は香港中文大学医学部の関連病院であるプリンスオブウェールズ病院の腎臓科の主任教授である。香港には、医学部として香港大学と香港中文大学の二つに医学部があった。同病院のベッド数は1800床である。また、現在、大規模の大学附属病院が建築中とのことであった。

プリンスオブウェールズ病院のDr. Philip Li MC  Lawのofficeで、今回の訪問趣旨を説明した。そして、香港の透析患者状況についてヒアリングを行った。

現在、香港は、人口は700万人程度だが、透析患者が4500人ほどいる。その中で腹膜透析が4000人、90%程度が腹膜透析を行っている。また同病院には400人程度の透析患者がいて260人に腹膜透析が行われているそうである。

事業の説明

腹膜透析室の見学  香港の透析患者状況の確認

 

今回の訪問は、香港の大規模デモという厳しい状況の中に行われたが、世界において腎臓科の医師として有名なDr. Philip Liを始め、スタッフが心地よい受け入れてくれおり、必要な情報を確認できた。その上、本事業の目的をよく理解していただいた。情勢を見ながら透析患者へ情報を伝達することとなった。

2.National University Hospital(シンガポール大学医学部付属病院)

シンガポールにある名門のシンガポール大学の医学部付属病院を訪問した。

NUHはNational University Hospitalの略で、シンガポール大学は、大学ランキングでアジアの中でトップクラスの大学である。日本の東京大学が8位であるので、如何にレベルの高い大学であるかが伺える。今回、腎臓科准教授のDr Jimmy Teo先生を訪ねた。

まず指定された医学部の建物に入ると近代的な内装が施されたロビーでそこにNUH(National University Hospital)の標識が非常に格調高く感じられた。喧騒としたシンガポールの中で、医学部の建物の中は、広々としていて静寂で威厳を感じた。

シンガポール大学附属病院ホールにて

会議室で腎臓科准教授のDr. Jimmy Teo先生に今回のシンガポール訪問の趣旨を説明し協力を要請した。訪問前に、事業についてDr. Jimmyに情報をお伝えした部分もあり、内容をよく把握していただいた。その上、関連部署である血液透析や腹膜透析部署の見学など手配していただいた。

シンガポール大学附属病院医局オフィスにて事業説明

オフィスで事業を説明後、病院を案内していただいた。医学部から病院には建物が別になっているので敷地内を移動したが、2回以上で長い渡り廊下を渡りながら、大学病院の全体を見ることができた。

シンガポール大学は、イギリスの植民地下で1905年に設立した大学であり、現在3つもキャンパスがある。NUHは、中心となるのがケントリッジキャンパスにある。ほとんどの大学の施設はこのキャンパスに集まっているため、かなりの広さで、キャンパス内を移動するにはシャトルバスを利用するようだ。

病院の渡り廊下から見た病院敷地が非常に広い

 最初に案内されたNUHの腎臓センターであった。当日、Dr Jimmy Teo以外に血液透析の医師や腹膜透析の担当医Dr Titus Lauや Dr Sabrina Haroonが同行されており、それぞれの部署の詳しい説明は、現場の責任者が行っていただいた。Dr Jimmy Teoの周到の手配に感謝。

透析センター及び透析患者状況の説明を受ける(井関邦敏 左写真 左1)

シンガポールは人口が561万人で、その中に約6000人の透析患者がいてその内、約10~15%が腹膜透析とのことであった。NUHには、約200人の透析患者がいてその内40人が腹膜透析が行われている。また、使っている透析液の型番や透析液のコネクターも見せていただき、コネクターの見本までいただいた。今後、シンガポールの透析患者の受入れに非常に役立っている。

腹膜透析専門看護師:NUHにおける腹膜透析のやり方を示してくれた(左写真)

    実際使われた透析液を見せていだいた(右写真)

 

病院の中を見学した後、建物の屋上に案内された。非常に見晴らしの良いところで、最上階は事務になっていて職員のためのスペースらしい。職員も、健康管理に気を付け大学も敷地の中にジムを設けて職員に開放している。さらに驚いた事は、屋上は、バーベキューなどもできるような構造になっていて週末ともなると職員の利用者が増えるそうである。福利厚生においても非常に素晴らしい大学であると感じた。

その後、透析センターと少し離れた病院の外来棟の見学となり、外来は、ホテルのような診察待ち相室があり、入り口には、担当医の名前の案内板がありました。

NUH外来担当医の案内板

 

病院の外来棟を階上から見ると病院の高層ビルと低層ビルをバランスよく配置し、シンガポールらしくみどりの街並と調和している。また、実際に外来に降りてみると、そこは地下鉄の駅と連結し、色々なお店もあり、非常に便利なつくりとなっていた。

 

病院の見学後、地下鉄で移動し、昼食ミーティング会場へ移動した。ミーティングには、腹膜透析の透析液の製造販売メーカー(FRESENIUS MEDICAL CARE)の担当者も含めて議論した。

FRESENIUS(フレゼニウス)は、ドイツに本社を置く、歴史は古く1462年に発足したヒルシュ薬局にさかのぼる。1743年、フレゼニウス家がヒルシュ薬局の経営権を取得し、フレゼニウスグループの礎を築きた。1912年にはエドワード・フレゼニウス博士が研究所を発展させ、薬の製造を開始(従業員数400名)。さらに、透析装置とダイアライザーの代理店へと事業拡張を進め、1979年には透析装置の自社生産を開始した。

1996年9月には、革新的製品の開発と生産に従事してきたフレゼニウス社透析部門と米国の大手透析センターであるナショナル メディカル ケア社を合併し、フレゼニウス メディカル ケアAGを設立しました。現在フレゼニウス メディカル ケア グループ は、世界的なリーナルケアのリーディングカンパニーとして多岐にわたる業務を展開している。(フレゼニウス メディカル ケア ジャパンより参照)

 

議論を通して透析液は、シンガポールから日本に旅行で来ても全く問題なく使用できる透析液もあれば、コネクターが異なり注意を要するメーカーもあることがわかった。また、シンガポールは、台湾や香港地域のような患者会がなく、製薬メーカーが患者の海外旅行をサポートしていることも分かった。

さらに、今回の事業内容をプレゼンができたことや今後メーカーの協力をいただけることを確認ができ、今回の訪問の大きな収穫となった。

昼食ミーティング際のプレゼン様子


令和元年度第2回台湾医療調査・交流

昨年提携した台北市立聯合病院を再度訪問し、該病院が取り込んでいる在宅医療やコニュニティーを視察することで、今後沖縄との交流を深めたいと同時に、本事業の目的を説明する。また、新たな病院や透析協会を訪問し、沖縄で透析旅行を体験したい患者への情報発信や、受入れの現地窓口になっていただくことも今回の訪問目的でもあった。

1.台北市立聯合醫院仁愛院區

昨年度、台北市立聯合病院で沖縄からの医療中国語受講生の現場実習を受け入れて頂き、またその時に「沖縄国際医療推進協会」とMOUを締結して、人材育成や臨床研究など相互交流が可能な状態となっている。今回は、透析患者の調査を含めて、台北市における高齢者医療、在宅医療などを視察する目的で同病院及び関連する施設、在宅医療センターや、そこで行われている実際の在宅医療などを視察させていただいた。

台北市立聯合病院は7つの総合病院よりなり、今回訪問した仁愛病院はその中でも中心的な急性期病院である。日本では急性期病院が在宅医療まで行っているのは考えにくいことではあるが、台湾では、まだ在宅医療が制度的に地域まで浸透しているわけではなく、台北市立聯合病院が、政策医療として、中心的に役割を担っている状況である。

 

仁愛病院に到着すると、蕭勝煌院區院長、陳淑廷醫務長、朱彩鳳主任、劉嘉仁特助、謝明軒主任らが玄関で出迎えてくれ、早速、透析室(3F)だけでなく、緩和病房(南棟3F)や緩和ケア・仁鶴軒(5F)などを案内して頂いた。

 

認知症ケアセンター

内装の折り畳み式簡易ベッド:普段はソファーとして使うが、認知症の患者さんは高齢で、体力的にも弱者なので、疲れた時には、すぐに休めるように、ソファーが、伸ばすとすぐに簡易ベッドになり、横になって休むことができる。

 

 蕭勝煌院長との交流ミーティング

仁愛病院における急性期医療から、高齢者介護、認知症ケア、在宅医療まで、台北市の基幹病院として果たしている役割についての説明などが行われた。

また、今回の訪問目的も説明をさせていただいた。

緩和ケア仁鶴軒の見学

2.士林慈悲關懷社區參訪 (士林神農宮)

士林神農宮は台北市にある地域信仰のお寺で、農業の神様を祭っているお寺である。台湾は地域信仰が盛んで、地域ごとの土着の神様を祭ったお寺が多数あり、周辺の住民はそれらをよく訪れる。今回は、その士林区にある高齢者コミュニティ拠点ともなっている神農宮を訪問した。神農は、農業の神様であり、薬草を食べていた伝説から薬の神様でもあることから薬の神様となったため、神農宮は病気平癒やケガ回復など健康のご利益があるところとなった。

神農宮は、現在、士林区の高齢者コミュニティの拠点となっている。

 

日本でお寺と言うと、葬式の時しか縁がないが、台湾のお寺は、土着の宗教のご神体があり、必ずしも仏教というわけではない。ここのご神体も左図の様に、形のある農業の神様で、住民はよく訪れ加護を祈る。

 

信仰心が厚い国民性がある。台北市立病院総院長の黄勝堅先生は、地域高齢者の拠点として、これらの地域信仰のお寺に目をつけ、これら地域のコミュニテイを中心に高齢者ケア拠点として機能させてきている。なぜなら、この地域にどれだけの高齢者がいるのか、また、一人住まいで、認知症になっているとか、身体障害があり、外出もままならないとか、それらの情報はお寺を中心としたその地区の区長さんなどがよく把握されているので、その人たちと一緒になり、地域の高齢者医療を実践していく仕組みが作られている。

お寺に血圧計などが設置されており、IDを通した後血圧測定すると自動的に台北市立病院の電子カルテに記録され普段の血圧を知ることができる。

独居の高齢者には、栄養管理目的で月に2回食事会が行われ、それには台北市立病院の栄養士が栄養管理を行いフレイルの防止に努めている。

高齢者のフレイル予防のための食事会スペース:月2回行われ、健康管理や安否の確認など、コミュニティを中心に行われている。

延命治療や、自分の意思での終末期の選択など、日本ではまだ市民レベルまで周知されていない内容のことが、台北市ではすでにお寺の普段の活動の中に浸透していることが分かった。

また、お寺の中の集会所では、医療講演会もよく行われ、医学的な講演会や、終末期ケアの事、延命治療についてのことなどもよく行われているとの事だった。その集会所の壁には大きな張り紙でDNR(心肺蘇生拒絶)やACP(終末期の意思)のことが張り出されているのが印象的だった。

神農宮の何逸松理事(区長)取組みの紹介

このお寺の現在の役割について説明が行われた。まず、これまで単なるお寺であった士林神農宮が、台北市立聯合病院と協力関係を構築し、高齢者医療、終末期医療、在宅医療に深くかかわるようになってきて、さらにスムーズに運営できるようにするために、士林神農宮を財団法人にしたとの説明があり、その記念に立派な書が掲げられていた。いわゆる財団の理事長は、台北市立聯合病院の総院長の黄勝堅先生であった。

財団法人:2018年6月

台湾国際慈悲開懐社区発展協会

董事長:黄勝堅

 

大学生の地域高齢者見守り活動の紹介

 

また、在宅医療や高齢者見守り取組みは、台北市各地区の大学とも連携し、活動は、学生のフィールドワークともなっている。学生による今後の台湾における高齢者医療の方向性や現状などについての説明があった。台北市の特徴はこのように大学と一緒になって学問的な裏付けを持ちながら進めており、学生の研究対象にもなっており常に新しい施策が講じられていくのはそのような取り組みに負うところが大きいと感じた。

3.臺北市立聯合醫院長照大橋據點

在宅医療を実際に行っている現場を視察させていただいた。拠点病院-お寺-在宅医療拠点ケアが有機的につながり、スムーズに運営されている。

センターにおける説明のプレゼンテーション

実際に配置されているその地区の家庭医と一緒に在宅医療の現場を訪問

日本と同様に急激な高齢化を迎えることが示されている。この様に高齢者が急増した場合に、施設での対応では間に合わない。だから在宅医療が必要であると話す。日本より遅れているが、その時期になると日本よりも高齢化のスピードは速い。

台湾の人口の攻勢を示すグラフ

 

雙和醫院は創立されて、数年前に新築移転してきてこの地域での診療はまだ、日が浅いとの事。以前はもっと小さな病院であったが、新築移転を機に病床拡張子1584床に拡張したとの事。副院長の話では、以前の病床は500床程度で、その時には経営的に厳しかったとの事。病床拡張し、以前より経営的には改善した。その時に、500~600床規模の小規模病院では経営が厳しいという話をされた時に、今回一緒に同行している、前沖縄県医師会長が同行していたが沖縄では、500床、600床だと大型病院になるのだが、ここでは小規模病院扱いになるのかとびっくりしていた。いつも国外に出て感じるのだが、日本以外の病院は1000~2000床規模の病院が多く、それがほぼ一般的だが日本の場合200~300床規模が標準でそれ以上が大型病院と規定される。その違いに驚かされる。

林裕峰副院長が対応

 

台湾における透析患者の現状と、台灣腎臟病防治基金會の活動内容などを紹介して頂いた。台湾の北部地域すなわち台北市を含めて台湾のほぼ北半分を網羅する透析患者会(台灣腎臟病防治基金會)を組織して透析患者の治療以外に日常生活上の気を付けるべきことや、啓もう活動さらに社会性の向上のためにこの活動を、林副院長を中心に進めていた。この活動に対する資金的な補助は全く無く、すべて会員の会費や色々な品々の売り上げで賄われているとの事。全く敬服至極である。今回の我々のプロジェクトを説明すると、患者さんの為になる取り組みだと賛同して頂いた。そして、その基金会から患者さんに、この内容を患者に案内して頂き、台北市を中心とした北部地域の患者さんへの広報の取りまとめをして頂けることとなった。

血液透析と腹膜透析がありそれぞれの方法で行っている

当病院における腹膜透析の方法について現場の看護師から説明を受ける。

 


令和元年度第1回台湾医療調査・交流

外国人観光客患者及び台湾透析患者受け入れのための院内整備を行うために台湾現地の政府との連携、医療機関の現状など調査を行い、台湾透析患者モニタリングを誘導しながら台湾透析患者を受け入れの検証・課題改善を整理し、沖縄医療現場の対応力経験値を上げ、受入れ基盤整備につなげる目的である。

台湾現地の関係医療機関へ直接訪問し、本事業の目的を説明する。沖縄で透析旅行を体験したい患者に情報伝達するように連携を取る。また、今回の事業において台湾の腹膜透析患者の誘導も含めて行うことも事業の目的でもあった。

  台湾の透析患者会や人口の多い高雄地域において大規模な病院や透析患者協会及び旅行社を選定して、以上の目的に沿って下記の施設の訪問調査を行った。

1.美和科技大学

高雄市の郊外に位置する美和科技大学に着くと、林祖繩理事長の挨拶、翁順祥校長の挨拶が行われた。我々も来訪した趣旨を挨拶した。そしてスライドを用いた学校紹介が行われ、看護学部に関しては台湾で3番目に大きく、クラスで言うと21クラス、1学年約2000人の学生がいるとのことで、美和科技大学の大きさに驚いた。台湾南部、高雄地域では一番大きく、ほとんどの病院に美和科技大学の卒業生がおり、この地域の看護師の約6分の一は美和科技大学の卒業生との事であった。今回、おもと会の介護施設にインターンシップの学生が実習に来る予定となっているため、その場に皆さん来て頂き、初の面談となった。

その後、看護学部の施設を案内してもらった。それぞれの実習室は、いろいろな場面を想定された実習室が作られていた。シミュレーターを用いたシミュレーション教育が現場実習の中心となっているそうだ。経鼻胃管の挿入や、救急蘇生の現場を想定した実習室などが多くあった。一番驚いたのは、人体の裁断模型(人体本物)で人体の横断面が分かるように作られていた。

看護学科の説明を受ける

2.高雄栄民総医院

高雄栄民総医院は、台北にある栄民病院に次に大きく約2000床との事である。約と言うのは、普段は1800床で運用しているが、災害などの非常時にはその枠を超えて病床を運営してよいとの事で、約と言う表現をしているとの事であった。中華民国中興の士、蒋介石によって創設された病院である。創設された当時は、軍人のための病院として創設され、退役軍人を含めて、公的な病院としての役割を担い、その後、純粋に国立病院として機能している。

今回、透析患者の誘導という事で、腎臓科、透析室を視察した。栄民病院は台湾の中でもレベルの高い病院であり、透析患者の管理や、感染症についての取り扱いやマネージメントは全く日本と一緒である。病院の中で日本と違いがあるのが産後ケア病棟だろう。台湾では、お産後約1か月は産褥回復のために仕事や家事はせずに静かに過ごす風習があり、そのための病棟である。保険は効かないそうだが、ほぼ常に満床で運営されている。よく街中でも産後ケアを看板があるが、その様なところで休むそうだ。また、緩和ケア病棟の視察も行った。最上階にあり、見晴らしも良く、また色々な絵画なども掛けられ心が和むような配慮がされていた。

台北市には3000床の栄民病院があり高雄の栄民病院は台湾で2番目に大きな病院である。 今回、我々は、その高雄栄民病院とMOUを締結し、医療従事者の相互交流、人材育成など、交流をしていくための基盤を構築することができた。そしてその署名式が多くの関係者の列席の下に行われた。当方は沖縄国際医療推進協会代表理事の城間寛氏と栄民病院側は黄嶋基(本部、総秘書)が署名のセレモニーに列席した。

沖縄国際医療推進協会と高雄栄民病院とのMOU締結式の様子

*調印を終えて締結書を交換

 

3.高雄長庚記念病院

長庚記念病院は、台北、高雄そしてあと2か所に病院があり、総病床数は1万床を超す、一大チェーン病院である。その中で、高雄長庚記念病院は2番目に大きく2688床もある巨大病院である。今回の訪問に関して、副院長で、腎臓科教授の李副院長が対応して頂いた。

透析室と腹膜透析室を見学し、今後相互交流が行える様に意見交換を行った。また。また、台湾には10台の陽子線治療機を設置する予定だが、その中でこの高雄長庚病院に2台が設置される予定だそうで、丁度、ミーティングを行った部屋の窓から外を眺めてみると、その陽子線治療センターのための建設工事が行われている建築現場があり、副院長より台湾におけるがん治療の現状などを説明して頂いた。

今回の、透析患者誘導のプレゼンも行ったところ、希望者がいれば紹介をすると話していただいた。

長庚記念病院のメンバーと記念撮影

 

記念品贈呈                  交流会議の様子

4.高雄医学大学附属病院

陳鴻鈞教授は、高雄医学大学附属病院の権威的な医師であり、世界においても各国の透析事業を詳しい先生である。また、台湾のすべての腎臓科を有する病院やクリニックが加入する「台湾腎臓医学会」の前理事長でもある。今回の訪問は、プロジェクトの説明や陳教授の協力をいただき、学会のHPを通して台湾透析患者誘導のお知らせをお願いしたいところであった。陳教授は、本事業の内容や目的をよく知っており、沖縄腎臓学会のとの交流も深いとのことで、心地よく承諾していただいた。

 

高雄医学大学附属病院 陳鴻鈞教授

5.社団法人高雄市佛光腎臓関懐協会

高雄市に位置する透析患者をサポートする患者会の一つである。今回の訪問目的は、本事業の周知と台湾南部地域の透析患者が沖縄観光したい場合、情報提供の窓口にしてもらうことを打診のためでもあった。総幹事の李さんは、南部の透析患者のことをいろいろ教えていただいた。今後、沖縄旅行した患者がいたら、繋げてくれることを合意した。

高雄市佛光腎臓関懐協会

6.佑鴻旅行社

高雄市に位置する旅行社で、日本に観光客を送り出す現地アウトバウンド旅行社であった。今回は、台湾人が好まれる医薬品などの聞き取り調査で訪問した次第である。副社長やマネジャーが対応していただいた。日本の東京、大阪などのゴールデンルートに団体の観光客をよく送っていたので、台湾人がよく買われて医薬品等をいろいろ教えていただいた。今後、沖縄に透析患者の旅行も考えてみたいと意欲を示してくれた。

佑鴻旅行社入口にて

よく買われた日本の医薬品


公募公告2:2019年度「外国人患者・海外透析患者の受入れ基盤整備プロジェクト事業」に係る 海外医療機関等連携・調査業務委託業務

弊社は「外国人患者・海外透析の受入れ基盤整備プロジェクト事業」を行なっております。それに伴い“台湾、中国大陸および香港、シンガーポール地域の医療機関との連携訪問調査および透析患者の誘導”の業務を委託できる業者を公募しています。詳しくは以下の資料をご参照ください。

公募公告2_海外医療機関連携調査等業務


公募公告1:2019年度「外国人患者・海外透析患者の受入れ基盤整備プロジェクト事業」に係る 医療現場多言語整備業務及び医療語学研修業務委託業務

弊社は「外国人患者・海外透析の受入れ基盤整備プロジェクト事業」を行なっております。それに伴い“医療現場多言語翻訳、医療中国語講座、海外医療機関実習”の業務を委託できる業者を公募しています。詳しくは以下の資料をご参照ください。

公募公告1_海外患者受入れ整備業務


平成30年度 第3回台湾出張 (12月)

台湾医療現場の現地実習を行うため、台北市立連合病院の訪問となります。また、今回は、現場実習を受け入れていただくためには、連合病院と友好提携をすることとなり、MOUの調印式に参加する大きな目的でもあります。今回の訪問調査は、これまで台湾の医療機関ネットワークづくりに尽力していただいた専門家である城間寛先生や腎臓病において世界各国とのネットワークを持ち且つ各国の透析現場をみてきた専門家井関邦敏先生に同行していただき、現場の指導を受けることとなりました。調査方法としては、沖縄の医療関係者と一緒に実習現場に入り、参加型の調査方法をとりました。

1. 仁愛病院・小児科、産後ケアセンター、透析室の見学

台湾に到後、予定の第一訪問先部署として、台北市立連合病院の医学研修センターにてVTRを用いて全体の紹介をしていただきました。

台北市立連合病院でのあいさつ

その後、医学研修センターの見学し、臨床技能訓練や研修のための精密機械なども揃っており、教育体制が整えている印象でした。医学教育センターは、研修医の教育や看護学生の現場実習の際に使用される場所です。今回、我々の研修メンバーは、看護学生もいるとのことで、臨床技能センターも見学させていただくことになりました。

臨床技能センターの集合写真

続けて、小児科病棟及び産後ケア病棟の見学となり、日本の病院には存在しない産後ケア病棟を見ることができ、台湾の医療文化や習慣について深く理解できました。小児科は、絵本に出てくるような物語の図柄や動物の絵など、子供に好まれるデザインが壁一面に描かれています。高齢社会を迎える台湾の医療機関は、こどもの健康や小児医療に大変力を入れており、仁愛病院の小児科も非常に努力されていることが伺えます。小児医療も台湾医療機関の特徴の一つとして確認ができました。

産後ケア病棟前

産後ケアセンターというのは日本にはない病棟です。台湾、中国では産婦はお産後1か月くらい動いてはいけないという考え方で、乳児の世話から産婦のお世話をします。台湾医療機関に特有の取組みを見ることができました。

仁愛病院小児科等の見学後に、翌日(12月21日)に予定していた透析室実習の事前準備として、透析現場研修において調べることや確認すべきなことを専門家の井関邦敏先生(腎臓内科専門医)や高嶺朝広先生(腎臓内科専門医)に指導していただきました。特に、感染症の扱い方や透析液の作り方に関して日本と異なることがあり、実習の際に注意してみてほしいという指導がありました。

病院見学後に、今回訪問のメインイベントでもある台北市立連合病院との友好締結のMOU調印式会場に向かいました。締結式は台北市内のホテルで午後6時から行われました。台湾側の参加者は黄勝堅総院長をはじめ、市立聯合病院の他の7つの病院の院長先生達および台北市衛生局長が立会人として参加しました。終了後台北市立聯合病院の院長先生達と食事会が行われました。今回の友好締結により、我々の台湾医療現場実習が実現できることとなり、今後も沖縄での病院現場の外国人対応力向上のために是非市立聯合病院の協力をお願いし、今後もこのような協力体制が実施できることが確認できました。

友好締結覚書にサイン

2. 台北市連合病院・仁愛病院 ソーシャルワーク室、認知症トレーニングセンター、透析室など

朝から台北市立仁愛病院にて現場実習を行いました。仁愛病院に到着して、玄関に沖縄からの研修生を歓迎する表示があったことに参加者全員は、感激しました。その後、会議室で忙しい外来時間の合間にきてくださった仁愛病院簫院長が実習の歓迎挨拶をいただきました。

仁愛病院簫院長の挨拶

各部署大勢なスタッフが私たちの研修のために待機していただきました。沖縄の研修参加者の職種に合わせてソーシャルワーカーの取組み、病院全体の取組み、透析室の見学・実習、看護学生のための臨床研修内容を用意しました。

仁愛病院での説明会

簫院長の挨拶後に、病院の組織図やソーシャルワーカーの役割、活動状況などの説明がありました。その後病院の施設案内があり、病院の中で、一般的な診療状の役割以外の特別な施設の紹介が行われました。
連合病院のソーシャルワーカーの支援体制や取組みについてお話を伺いました。連合病院全体のソーシャルワーカーの人数は43名だそうです。うち75%が有資格者です。三年以内に有資格者100%を達成できるように目指しているとのことでした。支援内容としては、個々のケースに応じて家庭訪問等を行って、支援コーディネーターであるケースマネジャーとサービス計画を調整したり、病識の無い患者さんへの支援や退院支援などを行っています。また認知症を抱えている方などが地域で生活できるために、患者さんがよく通うお店など地域の方々へ理解もらう役割も担っています。また今後の展望として、在宅ケアや在宅医療などトータルで関わっていけるように支援していきたいとのことでした。

ソーシャルワーカーの取組みについての紹介

その後、認知症の患者のデイケアを見せてもらいました。色々な作業療法を行いながら、認知症のリハビリに励んでいるのが印象的でした。ゲーム感覚で言葉のやり取りや、絵を用いた記憶の回帰など、色々な工夫が窺えました。

また、院内には、DV等の対応をする為のワンストップサービスが行っており、被害者の特別診察室もあり、被害者が羞恥心を更に傷つけられる事がないようにと配慮されていました。また、同様に児童虐待の時にも使用されるとの事で、患者に配慮された作りとなっていました。

認知症トレーニングセンター

透析室の見学・実習

前日に専門家の井関先生に透析に関して、日本との違いの指導を受けたうえで現場実習が行われており、その違いを注意しながら、現場の詳しい説明を再度聞くことになりました。まず、ミーティングルームで全体の説明と質疑応答が行われました。一般的な透析治療の質を問う医療指標のデータ分析の結果を説明され、現場は、医療指標に達するために、様々な努力がされていることが窺えました。これは、学会発表でも行われているように、医療の質を担保する努力が普段に行われていることを示しているものと理解しました。台湾の医療レベルは日本国内と遜色なく高いと研修生の全員が感心しました。

感染症についての説明がありました。沖縄では、B型肝炎感染患者が他の患者から隔離されて別ベッドで透析治療を受けていますが、仁愛病院では、B型肝炎だけでなく、C型やE型肝炎も同様に一般患者から離れた別のベッドが使用されてました。前日の井関先生のレクチャーもあったので、その取り扱いの相違が再度現場で確認できました。その後、透析班と学生班を分けてそれぞれの見学・実習を行いました。

透析室での見学・実習様子

実習後のスタッフとの意見交換・交流

すべての見学・実習後に仁愛病院の看護スタッフの意見交換会が行われました。見学の感想や日本との違いをそれぞれ述べました。看護主任は、沖縄の研修生のために台湾のおやつも用意していただき、研修の緊張感や疲れも取れ、楽しい雰囲気の中で最後の意見交換ができました。また、今後このような研修は、1週間も実施したいという要望もあり、次年度の計画としたいと考えています。

仁愛病院の看護師スタッフとの交流会


平成30年度 第2回台湾出張 (11月)

今回の台湾出張の目的は、医療中国語の台湾現地実習のため現地病院との調整と、腹膜透析患者の確認を行うことです。さらに、将来医療現場の人材不足解消に繋がるに台湾の看護学科がある大学も訪問し、医療人材をつなぐことも目的の一つです。

台湾現地の関係医療機関へ直接訪問し、ヒアリング方式及び交流会方式の調査を行いました。今回は、台北市立連合病院を選定し、12月の医療現場実習の具体的な相談も含めて協議しました。また、11月の腹膜透析患者の誘導を確認のため、旅行社を訪問し看護師、腹膜透析協会の方と進捗確認及び腹膜透析に関する詳細確認を行いました。これから訪問先ごとに意見交換した内容や調査の結果などを紹介します。

1. 台北仁濟醫院

台湾に到後、第一訪問先として、台北市内にある血液透析を専門とするクリニックである台北仁濟醫院を訪問しました。院長の李孟鴻先生に案内してもらい、透析室の機器や方法などの説明がありました。透析ベッドが21床でありますが、海外からも旅行透析を受け入れているとのことでした。院長先生にも出迎えしていただき、丁寧にクリニックのことを説明していただきました。透析機械は日本のテルモ社製でスムーズに透析治療が行われているという話もありました。同クリニック自身が海外からの透析患者を受け入れているので、今回、沖縄での透析患者の受け入れについては、協力的でした。また、今後、沖縄からの透析患者も受け入れたいという意向も確認できました。

台北・仁済病院前

2. 台北市連合病院・仁愛病院及び病院関係者との意見交換会

台北市立聯合病院の在宅医療の推進の方法として、コミュニティーを中心に高齢者の状況把握や、講演会や栄養指導を行っています。そのコミュニティーの一つである士林慈悲關懷社區(士林神農宮)を訪問し視察しました。士林神農宮とはいわゆる農業の神様を祀るお寺でその地域では有名なところです。地域の住人は良くその神農宮を訪れ、お祈りをするためその地域の住民の状況を把握しているとのことでした。また、その地区の区長も共同で住民把握を共に行っているため、ほとんどの住民の状況が可能になっているとのことです。

近年台湾でも高齢化が進んでおり、独居の人や認知症の人も次第に増えてきているとのことでした。そのような場合にコミュニケーションの場をお寺が提供しており、その中で医療的関与が必要な場合には市立聯合病院の地域在宅医療ケア拠点に連絡し在宅医療を介入していくとのことでした。

士林神農宮は由緒のあるお寺で、地元の人たちの信仰心は厚いです。そこを拠点に地域住民の健康管理を行なっています。高齢者の住民を対象に、月2回食事会を行い栄養状態のチェックを行うと共に栄養指導も行っています。台北市立聯合病院総院長の黄総院長、仁愛病院院長蕭勝煌先生なども参加して、地元の区長も一緒に高齢者に提供している食事会の食事を一緒に経験しました。栄養士の指導のもとで鶏肉、豚肉、野菜が調理されており、高齢者に提供しています。

月2回高齢者共同食事の行事(老人共餐)の様子

3. 地域高齢者ケア拠点(臺北市立聯合醫院長照大橋據點)

まず、台北市立聯合醫院長照大橋據點の取組みを紹介していただきました。訪問診療を行う医師が配属されており、主に家庭医を専門とする医師が中心になって地域をケアする体制となっています。また、訪問看護師が多く配置されていって、医師が往診出来ない所や、医師が往診するほどでもない軽症を看護師がカバーしているとのことでした。そして、いわゆるケアマネージャーが全体を把握して必要な医療提供を計画しています。

その後実際に市内の訪問診療を行なっている地域に向かって、高齢者の居住地域を案内していただきました。家族がいない独居の高齢者達が暮らす住居や集合住宅なども実際に見学することができました。四畳半一間の住居に衣服や家財道具が入っている様子は、日本と同様だと考えられました。台湾でも日本の高齢化の10年後を追いかけるような人口構成となっています。これら全ての高齢者に介護施設で暮らしてもらうことは、社会状況から見ても全く無理な状況であり、元気でADLがある程度維持できている高齢者には、在宅医療が今後の社会医療体制になっています。

台北市立連合病院の在宅医療の取組みの紹介

4. 台北市立病院訪問(臺北市立聯合醫院・仁愛院區)

台北市立聯合病院は7つの総合病院からなり、その中の一つである仁愛病院は病床数が約626床あり台市の高度急性期医療を担っています。今回は、その仁愛病院を視察しました。高度急性期病院であるため、救急機能が高く、多くの救急患者さんが、救急搬送やWalk inで受診しているそうです。ほぼ全ての疾患の救急を受け入れています。次に血液透析室を視察しました。透析室は、稼働ベッドが44床で、B型肝炎などがある感染症領域と一般との患者さんが区別されています。内装も落ち着いた雰囲気で、近代的な装備です。透析機会は日本製が使われています。透析方法などは、ほぼ日本のやり方と差異はなく、透析後の評価の方法も同様です。次に、特別な施設として国際的に活躍する運動選手育成のためのスポーツセンターがありました。それほど大きな施設ではなく100平方メートル程度の部屋が三つほどあり、その中に色々な運動機器と医療機器があり運動中の選手のデーターを計測しながら、選手へのアドバイスに役立てるとのことでした。

5. 12月の沖縄医療語学受講生の台湾医療現場見学・実習のための意見交換

台北市立聯合病院総院長の黄勝堅がプレゼンテーションを行いました。その内容について述べます。まず、台湾も高齢化社会を迎える時代となったため、それに対応できる医療提供体制を強化して行かなければなりません。また、台北市内にも病院に通院できないような高齢者、認知症の患者、また障害者の方がいます。そのような人たちにも対応できるようにしなければいけません。これは、2014年に台北市長になった柯文哲市長の文化革新理念でもあります。市長自身も医師で、長年台湾大学病院で医療を実践してきた医療人なのでその事は十分承知しています。その市長に指名されて市立聯合病院の総院長に就任したのが黄勝堅先生です。そのため総院長は強いリーダーシップを発揮して台北市内の医療改革に乗り出し、特にそのなかで取り組んでいるのが高齢者や障害者に対する在宅医療です。日本でも在宅医療はあるが、どちらかというと日本における在宅医療は、医療費を削減するために行われているところが多いですが、台北市における在宅医療は、高齢で病院の外来通院が困難であるとか、認知症の患者、また障害を持っている患者など、本当に患者中心の医療と言える在宅医療が実践されています。

日本では主に内科中心で、診察と処方を行う程度ですが、台北市では、耳鼻科の検査機器を持参して、診察から治療までを実践しています。また、眼科もコンパクトな検査機器を開発し、在宅でも診察が可能となっています。皮膚科診察では、スマホなどを用いて写真をとり、その写真を病院に送り、専門医に見てもらい意見を聞いて治療の参考としています。また歯科治療においても独自に開発した治療器を持参して在宅で歯科治療を行っています。台湾でもこれから高齢化社会に突入するということで、すべての患者を施設で収容することができないという事情もあるが、このように患者にとって本当に必要な治療が在宅で行われている事に感心しました。

最後に議題の台湾医療現場見学・実習の受け入れについて議論し、大まかな方向が決まりました。

意見交換後の撮影

6. 輔英科技大学

輔英科技大学は、台南市の南の方に位置し、看護系および介護系の教育する大学です。看護学科は 20クラスがあり、4000人の看護学科の学生が在籍しているとのことです。

今回、輔英科技大学を訪問する目的は、介護学科の学生の海外インターンシップについて協議することです。大学構内に入ってみると、広い敷地に校舎のビルが配置されています。大学の中には観光学科もあり、その実習場所として、大学構内にホテルを運営しています。ほぼ通常のホテルのような 6階建ての建物でした。そこではホテル業務に必要な現場実習を行っているとのことです。一泊 \3000程度の宿泊料金を取って宿泊してもらっています。主には学生の宿泊が多いとのことです。スポーツ系の大学の合宿や、宿泊研修などで利用されているようです。台湾の大学、特に科技大学では現場実習に必要な施設が充実しています。

看護学科主任の程先生を訪ね、台湾における看護教育、介護学の教育について話しを聞くと、台湾において介護の教育が行われるようになって来たのは、最近のことで、国においてもまだ介護保険制度もないとのことです。しかし早急に日本をモデルにして介護保険制度を構築する予定とのことです。そのため輔英科技大学でも 3年前に介護学科を新設して教育しているが、まだ卒業生は出ていません。日本はすでに介護保険制度ができてから、18年になり介護学の教育や介護施設ができており介護については先進国です。台湾はまだ十分に介護についての実践教育ができないので可能であれば日本の介護の現場で実地教育をできるようにして行きたいとおっしゃていました。具体的には、沖縄の介護施設に台湾の学生のインターンシップを行えるように調整することが挙げられます。

副学長との記念撮影

7. 華郁旅行社訪問

今回、台湾の血液透析の患者及び腹膜透析の患者の沖縄旅行について話し合うことが目的でした。これまでも透析患者の団体旅行を経験している同社ですが、やはり腎不全という医療弱者の旅行には慎重な対応体制を取っているのことが伺えました。以前、腹膜透析の患者の沖縄旅行を実施した時、実際に沖縄に到着してから、腹膜透析のカテーテルのギャップを忘れている事に気がつき、沖縄でカテーテルのキャップを探しましたが、病院にも問屋にも在庫がなく、結局そのまま台湾に帰ったと言う事もあったようです。そのために事前に台湾の透析患者が使用しているカテーテルやキャップなど付属の品を何点か提供してもらいました。このように些細な事まで入念に準備しておくことが肝要です。打合せによって、相互確認したい内容は、ほぼ解決となりました。

華郁旅行社訪問


平成30年度 第1回台湾出張 (8月)

台湾透析患者を含む外国人観光客患者の受け入れを行う病院内の整備を行うために、台湾現地の政府との連携や医療機関の現状など調査、台湾透析患者の受け入れの準備のために4日間の台湾出張を行いました。4日間で8箇所も訪問、調査をしました。訪問した場所での意見交換や調査したことを紹介します。

1. 台湾腎友生活品質促進協会

同協会は台湾全土の透析患者の生活向上のために運営されている組織で、その活動の中に海外旅行などの情報を提供し、透析病院の紹介なども行っているとのことです。今回、本プロジェクトの趣旨や台湾透析患者の誘導について説明しましたところ、台湾透析患者の希望者がいれば積極的に紹介してくださり協力していただけることを確認しました。

台湾透析患者の状況説明の様子

2. 台湾バクスター社及び台湾大学附属病院腎臓科教授との意見交換会

今回の事業の一つである腹膜透析患者のモニター誘導について、台湾では、腹膜透析の透析液はバクスター社の製品を使っているため、同社の責任者に参加に同席していただき、意見交換を行いました。腹膜透析患者が使う透析液の値段については、台湾と沖縄との値段の差があることを確認でき、台湾のバクスター社と沖縄の薬取扱い事業所が話し合うことができました。

3. 馬偕記念病院

馬偕記念病院は台北を代表する歴史も古い有名な大型病院です。馬偕記念病院における血液透析患者、および腹膜透析患者の状況について説明をしていただきました。医学的な内容で透析患者の管理内容は世界でもトップレベルの内容を誇っているということです。血液透析と腹膜透析の患者の割合では、まだ血液透析の患者の方が多いのですが、今後は次第に腹膜透析の方へ移行していくということでした。

馬偕記念病院内

4. 台南市政府

今回の台湾訪問に関しては沖縄県産業公社の補助事業の一環でおこなわれており、県の担当者も同行していることから、台南市政府当局に対して同事業の説明したいと打診を行いました。そのため今回の訪問に対して台南市側の参加者は、副市長、衛生局長など行政と、台南市の公的病院の病院長、および透析治療などを行っている民間病院やクリニックの院長などが参加して行われました。一通り本事業についての説明を行った後、ディスカッションに移りましたが、本事業については総論的に良好な理解をしていただきました。その上で、台南市側から、「今後継続的な取り組みとしていくためには、双方向の交流をしていたことが必要でしょう」と言う提案をいただきました。

台南市政府庁舎前

5. 裕生クリニック

高雄医学大学出身の先生が独立して開業しているクリニックです。高雄医学大学腎臓科主任教授の先生が案内するクリニックであるので、高雄の中でも優秀なクリニックだと感じました。建物や内装などを含めて日本国内のクリニックと比べてもアメニティーとしては素晴らしかったです。また透析室での設備内容や機器管理をみても整然と行われていました。非常に心地よいクリニックでした。同クリニックも透析患者に積極的に海外旅行を進めており、ツアーのパンフレットも置いてありました。

ヒアリング調査

6. 高雄医学附属病院

今回、訪問する予定になっている高雄大学医学部腎臓科主任教授は、数年前から沖縄にも訪問したことがある先生で、相互交流を行っていました。今回も本事業の説明と協力の打診行ったところ快く受け入れて頂き訪問になりました。最初に、高雄医学大学付属病院長の先生にも面会をすることができ、本事業についての説明を行いました。その後、黄教授の部屋で本事業についての細かい説明を行いました。黄教授から腹膜透析患者が透析液を携帯して海外旅行する際に液体の通関検査が難しいことを指摘しました。この事業モデルが確立できれば腹膜透析患者にとって便利になると期待しているとのことでした。また、この事業の内容を透析患者に周知することを協力していただけることも確認できました。

透析室内

7. 義大大昌医院

高雄にある企業立の大型病院です。義大医院は台湾を代表する大手鉄鋼会社の創業者が、自ら病気にかかりその治療のために台北に往復する日々を過ごし、高雄でも台北に劣らぬ同様な治療ができるようにするため、病院やがんセンターそして、医学大学まで創立をしたといういきさつがあります。今回は義大医院と付属するがんセンターを訪問見学しました。義大医院では、透析センターと入院施設を見学しました。最新の設備とアメニティーを備えた立派な施設でした。今回の事業について透析患者に周知していただけることを確認できました。

義大大昌医院腎臓科

8. 義大がんセンター病院

同グループ病院のがんセンター病院の見学をしました。建物の外観も日本の大都会にある一流建築物とそん色ない立派な建物でした。小児病棟は独自のキャラクターをかたどった絵柄が描かれて、子供にも怖さを忘れさせ楽しく過ごしていけるだろうと思われる配慮がなされていました。

義大がんセンター

今回の訪問は、歴史が古い有名な私立病院を始め、医学大学の附属病院、個人医師が開業する透析クリニック、台湾の企業グループ病院など、様々携帯の医療施設を見ることができ、台湾の医療機関との交流が一層広がり、台湾の医療界のネットワークづくりには非常に役立った訪問であることを実感しました。

最後に夕食交流会を義大医院院長の張基昌先生が催してくださりました。院長の張基昌生は大変親切な方で、終始楽しい雰囲気の中で交流を深めることができ、台湾のこと、沖縄のこと、今後の相互交流のことなどについて和やかに話しが進み、非常に有益な夕食会となりました。

義大大昌医院張院長を囲んで