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平成30年度 第2回台湾出張 (11月)

今回の台湾出張の目的は、医療中国語の台湾現地実習のため現地病院との調整と、腹膜透析患者の確認を行うことです。さらに、将来医療現場の人材不足解消に繋がるに台湾の看護学科がある大学も訪問し、医療人材をつなぐことも目的の一つです。

台湾現地の関係医療機関へ直接訪問し、ヒアリング方式及び交流会方式の調査を行いました。今回は、台北市立連合病院を選定し、12月の医療現場実習の具体的な相談も含めて協議しました。また、11月の腹膜透析患者の誘導を確認のため、旅行社を訪問し看護師、腹膜透析協会の方と進捗確認及び腹膜透析に関する詳細確認を行いました。これから訪問先ごとに意見交換した内容や調査の結果などを紹介します。

1. 台北仁濟醫院

台湾に到後、第一訪問先として、台北市内にある血液透析を専門とするクリニックである台北仁濟醫院を訪問しました。院長の李孟鴻先生に案内してもらい、透析室の機器や方法などの説明がありました。透析ベッドが21床でありますが、海外からも旅行透析を受け入れているとのことでした。院長先生にも出迎えしていただき、丁寧にクリニックのことを説明していただきました。透析機械は日本のテルモ社製でスムーズに透析治療が行われているという話もありました。同クリニック自身が海外からの透析患者を受け入れているので、今回、沖縄での透析患者の受け入れについては、協力的でした。また、今後、沖縄からの透析患者も受け入れたいという意向も確認できました。

台北・仁済病院前

2. 台北市連合病院・仁愛病院及び病院関係者との意見交換会

台北市立聯合病院の在宅医療の推進の方法として、コミュニティーを中心に高齢者の状況把握や、講演会や栄養指導を行っています。そのコミュニティーの一つである士林慈悲關懷社區(士林神農宮)を訪問し視察しました。士林神農宮とはいわゆる農業の神様を祀るお寺でその地域では有名なところです。地域の住人は良くその神農宮を訪れ、お祈りをするためその地域の住民の状況を把握しているとのことでした。また、その地区の区長も共同で住民把握を共に行っているため、ほとんどの住民の状況が可能になっているとのことです。

近年台湾でも高齢化が進んでおり、独居の人や認知症の人も次第に増えてきているとのことでした。そのような場合にコミュニケーションの場をお寺が提供しており、その中で医療的関与が必要な場合には市立聯合病院の地域在宅医療ケア拠点に連絡し在宅医療を介入していくとのことでした。

士林神農宮は由緒のあるお寺で、地元の人たちの信仰心は厚いです。そこを拠点に地域住民の健康管理を行なっています。高齢者の住民を対象に、月2回食事会を行い栄養状態のチェックを行うと共に栄養指導も行っています。台北市立聯合病院総院長の黄総院長、仁愛病院院長蕭勝煌先生なども参加して、地元の区長も一緒に高齢者に提供している食事会の食事を一緒に経験しました。栄養士の指導のもとで鶏肉、豚肉、野菜が調理されており、高齢者に提供しています。

月2回高齢者共同食事の行事(老人共餐)の様子

3. 地域高齢者ケア拠点(臺北市立聯合醫院長照大橋據點)

まず、台北市立聯合醫院長照大橋據點の取組みを紹介していただきました。訪問診療を行う医師が配属されており、主に家庭医を専門とする医師が中心になって地域をケアする体制となっています。また、訪問看護師が多く配置されていって、医師が往診出来ない所や、医師が往診するほどでもない軽症を看護師がカバーしているとのことでした。そして、いわゆるケアマネージャーが全体を把握して必要な医療提供を計画しています。

その後実際に市内の訪問診療を行なっている地域に向かって、高齢者の居住地域を案内していただきました。家族がいない独居の高齢者達が暮らす住居や集合住宅なども実際に見学することができました。四畳半一間の住居に衣服や家財道具が入っている様子は、日本と同様だと考えられました。台湾でも日本の高齢化の10年後を追いかけるような人口構成となっています。これら全ての高齢者に介護施設で暮らしてもらうことは、社会状況から見ても全く無理な状況であり、元気でADLがある程度維持できている高齢者には、在宅医療が今後の社会医療体制になっています。

台北市立連合病院の在宅医療の取組みの紹介

4. 台北市立病院訪問(臺北市立聯合醫院・仁愛院區)

台北市立聯合病院は7つの総合病院からなり、その中の一つである仁愛病院は病床数が約626床あり台市の高度急性期医療を担っています。今回は、その仁愛病院を視察しました。高度急性期病院であるため、救急機能が高く、多くの救急患者さんが、救急搬送やWalk inで受診しているそうです。ほぼ全ての疾患の救急を受け入れています。次に血液透析室を視察しました。透析室は、稼働ベッドが44床で、B型肝炎などがある感染症領域と一般との患者さんが区別されています。内装も落ち着いた雰囲気で、近代的な装備です。透析機会は日本製が使われています。透析方法などは、ほぼ日本のやり方と差異はなく、透析後の評価の方法も同様です。次に、特別な施設として国際的に活躍する運動選手育成のためのスポーツセンターがありました。それほど大きな施設ではなく100平方メートル程度の部屋が三つほどあり、その中に色々な運動機器と医療機器があり運動中の選手のデーターを計測しながら、選手へのアドバイスに役立てるとのことでした。

5. 12月の沖縄医療語学受講生の台湾医療現場見学・実習のための意見交換

台北市立聯合病院総院長の黄勝堅がプレゼンテーションを行いました。その内容について述べます。まず、台湾も高齢化社会を迎える時代となったため、それに対応できる医療提供体制を強化して行かなければなりません。また、台北市内にも病院に通院できないような高齢者、認知症の患者、また障害者の方がいます。そのような人たちにも対応できるようにしなければいけません。これは、2014年に台北市長になった柯文哲市長の文化革新理念でもあります。市長自身も医師で、長年台湾大学病院で医療を実践してきた医療人なのでその事は十分承知しています。その市長に指名されて市立聯合病院の総院長に就任したのが黄勝堅先生です。そのため総院長は強いリーダーシップを発揮して台北市内の医療改革に乗り出し、特にそのなかで取り組んでいるのが高齢者や障害者に対する在宅医療です。日本でも在宅医療はあるが、どちらかというと日本における在宅医療は、医療費を削減するために行われているところが多いですが、台北市における在宅医療は、高齢で病院の外来通院が困難であるとか、認知症の患者、また障害を持っている患者など、本当に患者中心の医療と言える在宅医療が実践されています。

日本では主に内科中心で、診察と処方を行う程度ですが、台北市では、耳鼻科の検査機器を持参して、診察から治療までを実践しています。また、眼科もコンパクトな検査機器を開発し、在宅でも診察が可能となっています。皮膚科診察では、スマホなどを用いて写真をとり、その写真を病院に送り、専門医に見てもらい意見を聞いて治療の参考としています。また歯科治療においても独自に開発した治療器を持参して在宅で歯科治療を行っています。台湾でもこれから高齢化社会に突入するということで、すべての患者を施設で収容することができないという事情もあるが、このように患者にとって本当に必要な治療が在宅で行われている事に感心しました。

最後に議題の台湾医療現場見学・実習の受け入れについて議論し、大まかな方向が決まりました。

意見交換後の撮影

6. 輔英科技大学

輔英科技大学は、台南市の南の方に位置し、看護系および介護系の教育する大学です。看護学科は 20クラスがあり、4000人の看護学科の学生が在籍しているとのことです。

今回、輔英科技大学を訪問する目的は、介護学科の学生の海外インターンシップについて協議することです。大学構内に入ってみると、広い敷地に校舎のビルが配置されています。大学の中には観光学科もあり、その実習場所として、大学構内にホテルを運営しています。ほぼ通常のホテルのような 6階建ての建物でした。そこではホテル業務に必要な現場実習を行っているとのことです。一泊 \3000程度の宿泊料金を取って宿泊してもらっています。主には学生の宿泊が多いとのことです。スポーツ系の大学の合宿や、宿泊研修などで利用されているようです。台湾の大学、特に科技大学では現場実習に必要な施設が充実しています。

看護学科主任の程先生を訪ね、台湾における看護教育、介護学の教育について話しを聞くと、台湾において介護の教育が行われるようになって来たのは、最近のことで、国においてもまだ介護保険制度もないとのことです。しかし早急に日本をモデルにして介護保険制度を構築する予定とのことです。そのため輔英科技大学でも 3年前に介護学科を新設して教育しているが、まだ卒業生は出ていません。日本はすでに介護保険制度ができてから、18年になり介護学の教育や介護施設ができており介護については先進国です。台湾はまだ十分に介護についての実践教育ができないので可能であれば日本の介護の現場で実地教育をできるようにして行きたいとおっしゃていました。具体的には、沖縄の介護施設に台湾の学生のインターンシップを行えるように調整することが挙げられます。

副学長との記念撮影

7. 華郁旅行社訪問

今回、台湾の血液透析の患者及び腹膜透析の患者の沖縄旅行について話し合うことが目的でした。これまでも透析患者の団体旅行を経験している同社ですが、やはり腎不全という医療弱者の旅行には慎重な対応体制を取っているのことが伺えました。以前、腹膜透析の患者の沖縄旅行を実施した時、実際に沖縄に到着してから、腹膜透析のカテーテルのギャップを忘れている事に気がつき、沖縄でカテーテルのキャップを探しましたが、病院にも問屋にも在庫がなく、結局そのまま台湾に帰ったと言う事もあったようです。そのために事前に台湾の透析患者が使用しているカテーテルやキャップなど付属の品を何点か提供してもらいました。このように些細な事まで入念に準備しておくことが肝要です。打合せによって、相互確認したい内容は、ほぼ解決となりました。

華郁旅行社訪問