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2020年03月 アーカイブ / ニュース

令和元年度第4回上海・重慶医療調査・交流

今回は、中国の透析患者事情を調査するために、まず、上海で医療ツーリズムを手掛ける会社や上海最も有名な上海交通大学附属病院である瑞金医院を訪問調査を行い、その後、内陸の人口が集中している中国の中央政府の直轄市である重慶を訪問した。重慶市にある医薬関連会社である重慶医薬集団颐和健康産業有限公司を訪問した。該会社は、国有企業「重慶医化集団」の子会社であり、健康産業を手掛けている会社である。今後、透析患者の誘導において意見交換や可能性について調査を行う目的であった。

1.先邦健康管理有限公司

これまで沖縄にも検診の患者を送り出している会社である。この会社は検診を専門的に行なっている会社でいくつかの検診センターを運営している。海外への検診目的の受診者の送り出しも行なっている。やはり人気が高い所といえば東京、大阪などの大都市であるそうだ。最近はあまり高額な検診は少なく、日本国内と大差ない料金体系になっている様です。また治療目的の患者の送り出しも行なっており、その内容としては、ほとんどがガン治療のようだ。大阪重粒子線治療センター、そして大阪癌センターとは業務提携を結び、そこでの治療を希望する患者さんには、患者さんの画像情報などを前もって日本に転送し、治療可能かどうかのある程度の診断をした上で日本にわたってもらうことにしているとのこと。やはり、高度に癌が進行している場合には、治療不可との診断になることもあるとのことであった。

今回の訪問目的や本事業の内容を説明を行い、今後の連携可能性について議論を行った。現在、透析患者を海外に送るケースは、まだ行っていないとのことであったが、我々の事業内容に対して非常に興味を示してくれた。今後、情報を交換しながら、試しにモデルケースとして実施してみたいという話をいただいた。

先邦健康管理有限公司ロビーにて     事業について議論

2.上海四維医学科技有限公司

上海四維医学科技有限公司を訪問した。この会社は、上海交通大学関連のベンチャー企業で検診や検査の遠隔診断を行なっていた。

一般的な検診結果の読影は病院の中で通常業務で行なっている。それ以外に心電図検査では、契約病院が心電図検査を行うと、そのデータがインターネットを介して送られ、診断医師が即に診断し、その報告書をネットを介して送るというサービスを行なっていた。契約している医療機関が1200で、上海を中心に中国全体に及んでいるとのことであった。次第に契約件数が増えているとのことであった。最近は臨床例にも利用されていて、特に夜間の救急病院で利用されているとの事であった。夜間は、医療従事者は忙しいので、画像の読影や心電図の診断は、病院で重宝されて次第に契約件数が伸びて来ていて年間460万件の検査結果の遠隔診断を行なっている。

モニターは、現在遠隔診断の数字をリアル的に表示されており、各担当医の診断件数を一括管理している。

3.上海瑞金病院

また、日本との医療ツーリズムも盛んに行い、大阪の重粒子線治療センター及び癌センターとは専属契約を行い、中国の患者のやり取りはこの会社が行なっているとの事、この会社を通して主治医の情報のやりとりを行なっているそうである。検診に関しては、胃カメラ大腸ファイバー検査、及びPETを組み合わせた検診が、人気があるとのことである。

 

調査の翌日午後に、上海交通大学の附属瑞金病院の訪問視察を行なった。上海瑞金病院は、現在では上海交通大学医学院の基幹関連病院としての役割を果たしている。総ベッド数が2100床の総合病院で、3900人の職員(うち医師が990人以上)が働いている。上海の中心地に位置しており、45専門分野を持つ有名な総合病院である。

その中で、腎臓内科の医師28人、80床を運用している。視察しその後カンファレンスを行った。瑞金病院の透析患者数は、 血液透析 300人 腹膜透析患者 300人 と透析ベッドの数は80床で、1日3交代で透析治療を行い、300人の血液透析患者の透析治療を行い、また腹膜透析も300人おり、月1回の外来通院治療を行なっているとのことであった。

 

上海には透析患者が約15000人いて、血液透析 10000人 腹膜透析患者 5000人とのこと、最近では腹膜透析を導入する患者が増えて来ているそうだ。

中国全体で最近血液透析患者の登録制度が施行されてきて、2019年現在、登録されている透析患者は60万人 しかしこれまで登録されていない患者がいると考えられるので、来年には70万人、あるいは80万人になるかもしれないとのこと。上海市の人口は2600万人で、台湾が人口2300万人で透析患者は、約8万人いることを考えると、上海市の透析患者15000人は少な過ぎる感じがする。登録制度がもっと進めば、やはり台湾と同じ程度の患者になるのではないかと考えられた。

瑞金病院では、カンファレンスルームで、まず准教授の先生から瑞金病院での透析治療の現状について、プレゼンテーションが行われ、それに引き続き、井関先生がKDIGOにおけるガイドライン作りの内情などが報告され、世界にまたがる場合、ヨーロッパとアジアでは人種が異なるため、ガイドラインも一つで当てはめるのは困難との事であった。次に、SORAアカデミーサポートから、今回のプロジェクトの内容に関して説明を行った。

世界の透析事情の紹介      本プロジェクトの説明

 

その後、今回の透析患者誘導についてのプレゼンテーション後の議論を行われた。

主任教授陳楠先生からも非常に素晴らしい取り組みだとのお言葉を頂いた。これまで透析患者は、透析治療という制約から、自宅と病院だけの往復という生活を余儀なくされていた。しかし生活習慣病治療、あるいは腎臓病治療という観点からも、運動療法は非常に有効な治療であり、透析患者にもそれは当てはまる。そのため中国では最近から透析患者にまず国内旅行を進める取組みをしているところであり、それが外国に広がるにしても、今回の取り組みの様に、医療従事者に語学教育を行いながら、主治医との連携も取りながら、透析治療のサポートをしてくれる組織があれば、患者は、安心して海外にも旅行できる。非常に良い取り組みであると高く評価をいただいた。特に今回のプロジェクトが、1医療機関の企業ベースの取り組みではなくて、沖縄県が支援を受けて行われているということであれば、病院としても、患者や周りの医療機関にも周知しやすいとのことを教えていただいた。

 

院内紹介、視察が行われ、特に内科病棟、血液透析室、および腹膜透析室を案内して頂いた。

上海医療関係者、日本の製薬メーカー交流会

上海瑞金医院透析センター

4.重鋼総医院

二日目に訪問したところは、重慶市にある医薬関連会社である重慶医薬集団颐和健康産業有限公司を訪問した。該会社は、国有企業「重慶医化集団」の子会社であり、健康産業を手掛けている会社である。

重慶医化集団は薬の流通では中国で6番目の規模を誇り、西地区ではトップとのことであった。しかし薬の流通だけでは今後なかなか経営的に厳しくなるとのことで、現在、病院2つを買収して医療と健康産業に力を入れることとなっている。その中、今回訪問した「重鋼総医院」は1000床で重慶の中では2級病院とのこと。中国ではレベルの高い病院は3級病院となり、その次に2級、1級となるそうだ。実際に救急室を見学したが、1000床の病院としては、日本と比較して設備が少ないように見えた。透析室も28床あり、患者は80人程度で、通常2クールで対応されて、一部は、3クールで透析治療を行っているとのこと。

また、ICUなども入ることができ、中国内陸の医療状況を見ることができた。ICU見学ごに休憩室でICUの主任先生と意見交換を行った。

重鋼総医院ICUにて        ICU先生方と意見交換

 

病院見学を終えてミーティングルームで今回の訪問目的などを説明する機会をいただいた。その際に、病院等の他にこの地区の党の書記長なる人物が参加し。院長よりも権限があるとのことで中国の体制的なものが伝わってくる。また、病院のすぐ隣に廃止された商業モールがあり、このグループがこの施設も買い取りアメニテイーの高い医療施設を作る計画をしているようで、その中の目玉は「再生医療」とのことで、何処からその技術を導入するか聞いたが、明確には答えてくれなかった。今後、各面での交流・連携を図ることが確認できた。

重鋼総医院ミーティング

 

5.四联優侍養老産業有限公司(老健施設見学)

重慶市から車で、1時間ほど郊外に進めた場所にその介護施設はあった。もともと、市の土地でメーター製造工場などがあった地域であったが、それらの工場が廃業となったために、土地と建物の有効利用するために、この有限公司が払い下げを受けて介護施設を作ったようであった。もともと自然豊かな地域だが、その中でも川沿いに面し、約1万坪の敷地の中に、居住区としての建物やリハビリ施設、医療施設が別建物にあり、その間は木々に覆われて、非常に心落ち着く配置になっていた。

まず玄関ロビーに入ると、この施設のミニチュアが作られており、全体像が理解できた。

優侍養老産設の外観             優侍養老産業施設の説明を受ける

 

居住区のメインの建物は5階建ての洒落た建物で、真ん中は大きな吹き抜けになっており、夏は涼しく、冬は床暖房が設置されているので暖かいそうだ。我々が訪問した時には、20人ぐらいの高齢者がその吹き抜けの中で、誰かの話を聞いていた。何の話をしているかと尋ねると、「党の時間」で中国共産党が現在進めている政治的な政策などを分かり易く解説して話をしているとのことであった。

広い多目的ホールで高齢者が勉強会を開いた

 

居住区に中には、それぞれの部屋があり、一人部屋、二人部屋、三人部屋があり、また部屋のベッドの枕元には病院と同じように酸素と吸引の配管がされており救急の場合にも部屋で対応できる作りとなっている。また、居住者は、入居の時にネームバンドが配布され、そしてそれにはGPS機能が設定され3Dで位置情報が確認できるので、迷ってどこかの建物に紛れ込んでも、すぐに分かるそうである。

 広大の敷地内にリハビリテーションセンターや外来機能を持つクリニックなども充実している。さらに、中国特有の太極拳なども朝のリハビリに取り入れているとのこと。

優侍リハビリテーションセンター          敷地の段差を利用した滝の前

 

現在この施設への入居者は400人で今後1000人まで増やしていきたいとのことであった。また入居費用は5000元~10000元、日本円に換算すると7万円~15万円程度になる。やはり、重慶市でも高額所得者が入居しているらしい。入居者のこれまでの職業を聞いてみると、大学教授、パイロット、医師など高学歴者が入っている様子。日本の場合、この様な介護施設は市町村に設置認可の権限があり、そしてその地域に必要な人数だけを認可する仕組みになっているので、ここの施設のように400人などの規模は建設が不可能である。中国では、入居する立場で考えるとこの様な、充実した施設も建築できるような取組みも可能であったことに驚いた。

 

最後に、市内を少し回ってみると、揚子江に面した市内は、兎に角とてつもなく数多くの高層ビル(多分居住用)と商業用と思われるビル群が数多く見えた。また、その近くで高速道路の工事が今でも行われており、我々が訪問した地域はほぼ、道路の舗装や建物の建築は一通り済んでいるが、さらに高速道路やビル建築している様子を見ると、中国のGDPはこれらの内需だけでも、まだ今後10年近くは進むのではないかと思われた。重慶市は人口1000万人、そのしゅうへんを含めると3000万人になるそうだ。四川省だけで一億人、この国の大きさを実感した。これから、透析患者も増える一方で、我々もその受入れ準備に備えないと対応できないと考えた。


令和元年度第3回香港・シンガポール医療調査・交流

今回は、香港、およびシンガポールの透析患者事情を調査するために、まず、香港中文大学の関連病院であるプリンスオブウェールズ病院のDr. Philip Liを訪問することと、シンガポールの国立シンガポール大学病院の腎臓科準教授のDr Jimmy Teo先生を訪問しシンガポールの透析患者事情及び沖縄への透析患者誘導の可能性を依頼することが大きな目的である。

1.香港中文大学:プリンスオブウェールズ病院(沙田威爾斯親王醫院)

調査日の当日は、香港では空港を中心にストライキが行われており、街中は喧噪としており、不穏な雰囲気が街中を取り巻いている。そのような状況下で病院を訪問した。Dr. Philip Li MC Law教授は香港中文大学医学部の関連病院であるプリンスオブウェールズ病院の腎臓科の主任教授である。香港には、医学部として香港大学と香港中文大学の二つに医学部があった。同病院のベッド数は1800床である。また、現在、大規模の大学附属病院が建築中とのことであった。

プリンスオブウェールズ病院のDr. Philip Li MC  Lawのofficeで、今回の訪問趣旨を説明した。そして、香港の透析患者状況についてヒアリングを行った。

現在、香港は、人口は700万人程度だが、透析患者が4500人ほどいる。その中で腹膜透析が4000人、90%程度が腹膜透析を行っている。また同病院には400人程度の透析患者がいて260人に腹膜透析が行われているそうである。

事業の説明

腹膜透析室の見学  香港の透析患者状況の確認

 

今回の訪問は、香港の大規模デモという厳しい状況の中に行われたが、世界において腎臓科の医師として有名なDr. Philip Liを始め、スタッフが心地よい受け入れてくれおり、必要な情報を確認できた。その上、本事業の目的をよく理解していただいた。情勢を見ながら透析患者へ情報を伝達することとなった。

2.National University Hospital(シンガポール大学医学部付属病院)

シンガポールにある名門のシンガポール大学の医学部付属病院を訪問した。

NUHはNational University Hospitalの略で、シンガポール大学は、大学ランキングでアジアの中でトップクラスの大学である。日本の東京大学が8位であるので、如何にレベルの高い大学であるかが伺える。今回、腎臓科准教授のDr Jimmy Teo先生を訪ねた。

まず指定された医学部の建物に入ると近代的な内装が施されたロビーでそこにNUH(National University Hospital)の標識が非常に格調高く感じられた。喧騒としたシンガポールの中で、医学部の建物の中は、広々としていて静寂で威厳を感じた。

シンガポール大学附属病院ホールにて

会議室で腎臓科准教授のDr. Jimmy Teo先生に今回のシンガポール訪問の趣旨を説明し協力を要請した。訪問前に、事業についてDr. Jimmyに情報をお伝えした部分もあり、内容をよく把握していただいた。その上、関連部署である血液透析や腹膜透析部署の見学など手配していただいた。

シンガポール大学附属病院医局オフィスにて事業説明

オフィスで事業を説明後、病院を案内していただいた。医学部から病院には建物が別になっているので敷地内を移動したが、2回以上で長い渡り廊下を渡りながら、大学病院の全体を見ることができた。

シンガポール大学は、イギリスの植民地下で1905年に設立した大学であり、現在3つもキャンパスがある。NUHは、中心となるのがケントリッジキャンパスにある。ほとんどの大学の施設はこのキャンパスに集まっているため、かなりの広さで、キャンパス内を移動するにはシャトルバスを利用するようだ。

病院の渡り廊下から見た病院敷地が非常に広い

 最初に案内されたNUHの腎臓センターであった。当日、Dr Jimmy Teo以外に血液透析の医師や腹膜透析の担当医Dr Titus Lauや Dr Sabrina Haroonが同行されており、それぞれの部署の詳しい説明は、現場の責任者が行っていただいた。Dr Jimmy Teoの周到の手配に感謝。

透析センター及び透析患者状況の説明を受ける(井関邦敏 左写真 左1)

シンガポールは人口が561万人で、その中に約6000人の透析患者がいてその内、約10~15%が腹膜透析とのことであった。NUHには、約200人の透析患者がいてその内40人が腹膜透析が行われている。また、使っている透析液の型番や透析液のコネクターも見せていただき、コネクターの見本までいただいた。今後、シンガポールの透析患者の受入れに非常に役立っている。

腹膜透析専門看護師:NUHにおける腹膜透析のやり方を示してくれた(左写真)

    実際使われた透析液を見せていだいた(右写真)

 

病院の中を見学した後、建物の屋上に案内された。非常に見晴らしの良いところで、最上階は事務になっていて職員のためのスペースらしい。職員も、健康管理に気を付け大学も敷地の中にジムを設けて職員に開放している。さらに驚いた事は、屋上は、バーベキューなどもできるような構造になっていて週末ともなると職員の利用者が増えるそうである。福利厚生においても非常に素晴らしい大学であると感じた。

その後、透析センターと少し離れた病院の外来棟の見学となり、外来は、ホテルのような診察待ち相室があり、入り口には、担当医の名前の案内板がありました。

NUH外来担当医の案内板

 

病院の外来棟を階上から見ると病院の高層ビルと低層ビルをバランスよく配置し、シンガポールらしくみどりの街並と調和している。また、実際に外来に降りてみると、そこは地下鉄の駅と連結し、色々なお店もあり、非常に便利なつくりとなっていた。

 

病院の見学後、地下鉄で移動し、昼食ミーティング会場へ移動した。ミーティングには、腹膜透析の透析液の製造販売メーカー(FRESENIUS MEDICAL CARE)の担当者も含めて議論した。

FRESENIUS(フレゼニウス)は、ドイツに本社を置く、歴史は古く1462年に発足したヒルシュ薬局にさかのぼる。1743年、フレゼニウス家がヒルシュ薬局の経営権を取得し、フレゼニウスグループの礎を築きた。1912年にはエドワード・フレゼニウス博士が研究所を発展させ、薬の製造を開始(従業員数400名)。さらに、透析装置とダイアライザーの代理店へと事業拡張を進め、1979年には透析装置の自社生産を開始した。

1996年9月には、革新的製品の開発と生産に従事してきたフレゼニウス社透析部門と米国の大手透析センターであるナショナル メディカル ケア社を合併し、フレゼニウス メディカル ケアAGを設立しました。現在フレゼニウス メディカル ケア グループ は、世界的なリーナルケアのリーディングカンパニーとして多岐にわたる業務を展開している。(フレゼニウス メディカル ケア ジャパンより参照)

 

議論を通して透析液は、シンガポールから日本に旅行で来ても全く問題なく使用できる透析液もあれば、コネクターが異なり注意を要するメーカーもあることがわかった。また、シンガポールは、台湾や香港地域のような患者会がなく、製薬メーカーが患者の海外旅行をサポートしていることも分かった。

さらに、今回の事業内容をプレゼンができたことや今後メーカーの協力をいただけることを確認ができ、今回の訪問の大きな収穫となった。

昼食ミーティング際のプレゼン様子


令和元年度第2回台湾医療調査・交流

昨年提携した台北市立聯合病院を再度訪問し、該病院が取り込んでいる在宅医療やコニュニティーを視察することで、今後沖縄との交流を深めたいと同時に、本事業の目的を説明する。また、新たな病院や透析協会を訪問し、沖縄で透析旅行を体験したい患者への情報発信や、受入れの現地窓口になっていただくことも今回の訪問目的でもあった。

1.台北市立聯合醫院仁愛院區

昨年度、台北市立聯合病院で沖縄からの医療中国語受講生の現場実習を受け入れて頂き、またその時に「沖縄国際医療推進協会」とMOUを締結して、人材育成や臨床研究など相互交流が可能な状態となっている。今回は、透析患者の調査を含めて、台北市における高齢者医療、在宅医療などを視察する目的で同病院及び関連する施設、在宅医療センターや、そこで行われている実際の在宅医療などを視察させていただいた。

台北市立聯合病院は7つの総合病院よりなり、今回訪問した仁愛病院はその中でも中心的な急性期病院である。日本では急性期病院が在宅医療まで行っているのは考えにくいことではあるが、台湾では、まだ在宅医療が制度的に地域まで浸透しているわけではなく、台北市立聯合病院が、政策医療として、中心的に役割を担っている状況である。

 

仁愛病院に到着すると、蕭勝煌院區院長、陳淑廷醫務長、朱彩鳳主任、劉嘉仁特助、謝明軒主任らが玄関で出迎えてくれ、早速、透析室(3F)だけでなく、緩和病房(南棟3F)や緩和ケア・仁鶴軒(5F)などを案内して頂いた。

 

認知症ケアセンター

内装の折り畳み式簡易ベッド:普段はソファーとして使うが、認知症の患者さんは高齢で、体力的にも弱者なので、疲れた時には、すぐに休めるように、ソファーが、伸ばすとすぐに簡易ベッドになり、横になって休むことができる。

 

 蕭勝煌院長との交流ミーティング

仁愛病院における急性期医療から、高齢者介護、認知症ケア、在宅医療まで、台北市の基幹病院として果たしている役割についての説明などが行われた。

また、今回の訪問目的も説明をさせていただいた。

緩和ケア仁鶴軒の見学

2.士林慈悲關懷社區參訪 (士林神農宮)

士林神農宮は台北市にある地域信仰のお寺で、農業の神様を祭っているお寺である。台湾は地域信仰が盛んで、地域ごとの土着の神様を祭ったお寺が多数あり、周辺の住民はそれらをよく訪れる。今回は、その士林区にある高齢者コミュニティ拠点ともなっている神農宮を訪問した。神農は、農業の神様であり、薬草を食べていた伝説から薬の神様でもあることから薬の神様となったため、神農宮は病気平癒やケガ回復など健康のご利益があるところとなった。

神農宮は、現在、士林区の高齢者コミュニティの拠点となっている。

 

日本でお寺と言うと、葬式の時しか縁がないが、台湾のお寺は、土着の宗教のご神体があり、必ずしも仏教というわけではない。ここのご神体も左図の様に、形のある農業の神様で、住民はよく訪れ加護を祈る。

 

信仰心が厚い国民性がある。台北市立病院総院長の黄勝堅先生は、地域高齢者の拠点として、これらの地域信仰のお寺に目をつけ、これら地域のコミュニテイを中心に高齢者ケア拠点として機能させてきている。なぜなら、この地域にどれだけの高齢者がいるのか、また、一人住まいで、認知症になっているとか、身体障害があり、外出もままならないとか、それらの情報はお寺を中心としたその地区の区長さんなどがよく把握されているので、その人たちと一緒になり、地域の高齢者医療を実践していく仕組みが作られている。

お寺に血圧計などが設置されており、IDを通した後血圧測定すると自動的に台北市立病院の電子カルテに記録され普段の血圧を知ることができる。

独居の高齢者には、栄養管理目的で月に2回食事会が行われ、それには台北市立病院の栄養士が栄養管理を行いフレイルの防止に努めている。

高齢者のフレイル予防のための食事会スペース:月2回行われ、健康管理や安否の確認など、コミュニティを中心に行われている。

延命治療や、自分の意思での終末期の選択など、日本ではまだ市民レベルまで周知されていない内容のことが、台北市ではすでにお寺の普段の活動の中に浸透していることが分かった。

また、お寺の中の集会所では、医療講演会もよく行われ、医学的な講演会や、終末期ケアの事、延命治療についてのことなどもよく行われているとの事だった。その集会所の壁には大きな張り紙でDNR(心肺蘇生拒絶)やACP(終末期の意思)のことが張り出されているのが印象的だった。

神農宮の何逸松理事(区長)取組みの紹介

このお寺の現在の役割について説明が行われた。まず、これまで単なるお寺であった士林神農宮が、台北市立聯合病院と協力関係を構築し、高齢者医療、終末期医療、在宅医療に深くかかわるようになってきて、さらにスムーズに運営できるようにするために、士林神農宮を財団法人にしたとの説明があり、その記念に立派な書が掲げられていた。いわゆる財団の理事長は、台北市立聯合病院の総院長の黄勝堅先生であった。

財団法人:2018年6月

台湾国際慈悲開懐社区発展協会

董事長:黄勝堅

 

大学生の地域高齢者見守り活動の紹介

 

また、在宅医療や高齢者見守り取組みは、台北市各地区の大学とも連携し、活動は、学生のフィールドワークともなっている。学生による今後の台湾における高齢者医療の方向性や現状などについての説明があった。台北市の特徴はこのように大学と一緒になって学問的な裏付けを持ちながら進めており、学生の研究対象にもなっており常に新しい施策が講じられていくのはそのような取り組みに負うところが大きいと感じた。

3.臺北市立聯合醫院長照大橋據點

在宅医療を実際に行っている現場を視察させていただいた。拠点病院-お寺-在宅医療拠点ケアが有機的につながり、スムーズに運営されている。

センターにおける説明のプレゼンテーション

実際に配置されているその地区の家庭医と一緒に在宅医療の現場を訪問

日本と同様に急激な高齢化を迎えることが示されている。この様に高齢者が急増した場合に、施設での対応では間に合わない。だから在宅医療が必要であると話す。日本より遅れているが、その時期になると日本よりも高齢化のスピードは速い。

台湾の人口の攻勢を示すグラフ

 

雙和醫院は創立されて、数年前に新築移転してきてこの地域での診療はまだ、日が浅いとの事。以前はもっと小さな病院であったが、新築移転を機に病床拡張子1584床に拡張したとの事。副院長の話では、以前の病床は500床程度で、その時には経営的に厳しかったとの事。病床拡張し、以前より経営的には改善した。その時に、500~600床規模の小規模病院では経営が厳しいという話をされた時に、今回一緒に同行している、前沖縄県医師会長が同行していたが沖縄では、500床、600床だと大型病院になるのだが、ここでは小規模病院扱いになるのかとびっくりしていた。いつも国外に出て感じるのだが、日本以外の病院は1000~2000床規模の病院が多く、それがほぼ一般的だが日本の場合200~300床規模が標準でそれ以上が大型病院と規定される。その違いに驚かされる。

林裕峰副院長が対応

 

台湾における透析患者の現状と、台灣腎臟病防治基金會の活動内容などを紹介して頂いた。台湾の北部地域すなわち台北市を含めて台湾のほぼ北半分を網羅する透析患者会(台灣腎臟病防治基金會)を組織して透析患者の治療以外に日常生活上の気を付けるべきことや、啓もう活動さらに社会性の向上のためにこの活動を、林副院長を中心に進めていた。この活動に対する資金的な補助は全く無く、すべて会員の会費や色々な品々の売り上げで賄われているとの事。全く敬服至極である。今回の我々のプロジェクトを説明すると、患者さんの為になる取り組みだと賛同して頂いた。そして、その基金会から患者さんに、この内容を患者に案内して頂き、台北市を中心とした北部地域の患者さんへの広報の取りまとめをして頂けることとなった。

血液透析と腹膜透析がありそれぞれの方法で行っている

当病院における腹膜透析の方法について現場の看護師から説明を受ける。

 


令和元年度第1回台湾医療調査・交流

外国人観光客患者及び台湾透析患者受け入れのための院内整備を行うために台湾現地の政府との連携、医療機関の現状など調査を行い、台湾透析患者モニタリングを誘導しながら台湾透析患者を受け入れの検証・課題改善を整理し、沖縄医療現場の対応力経験値を上げ、受入れ基盤整備につなげる目的である。

台湾現地の関係医療機関へ直接訪問し、本事業の目的を説明する。沖縄で透析旅行を体験したい患者に情報伝達するように連携を取る。また、今回の事業において台湾の腹膜透析患者の誘導も含めて行うことも事業の目的でもあった。

  台湾の透析患者会や人口の多い高雄地域において大規模な病院や透析患者協会及び旅行社を選定して、以上の目的に沿って下記の施設の訪問調査を行った。

1.美和科技大学

高雄市の郊外に位置する美和科技大学に着くと、林祖繩理事長の挨拶、翁順祥校長の挨拶が行われた。我々も来訪した趣旨を挨拶した。そしてスライドを用いた学校紹介が行われ、看護学部に関しては台湾で3番目に大きく、クラスで言うと21クラス、1学年約2000人の学生がいるとのことで、美和科技大学の大きさに驚いた。台湾南部、高雄地域では一番大きく、ほとんどの病院に美和科技大学の卒業生がおり、この地域の看護師の約6分の一は美和科技大学の卒業生との事であった。今回、おもと会の介護施設にインターンシップの学生が実習に来る予定となっているため、その場に皆さん来て頂き、初の面談となった。

その後、看護学部の施設を案内してもらった。それぞれの実習室は、いろいろな場面を想定された実習室が作られていた。シミュレーターを用いたシミュレーション教育が現場実習の中心となっているそうだ。経鼻胃管の挿入や、救急蘇生の現場を想定した実習室などが多くあった。一番驚いたのは、人体の裁断模型(人体本物)で人体の横断面が分かるように作られていた。

看護学科の説明を受ける

2.高雄栄民総医院

高雄栄民総医院は、台北にある栄民病院に次に大きく約2000床との事である。約と言うのは、普段は1800床で運用しているが、災害などの非常時にはその枠を超えて病床を運営してよいとの事で、約と言う表現をしているとの事であった。中華民国中興の士、蒋介石によって創設された病院である。創設された当時は、軍人のための病院として創設され、退役軍人を含めて、公的な病院としての役割を担い、その後、純粋に国立病院として機能している。

今回、透析患者の誘導という事で、腎臓科、透析室を視察した。栄民病院は台湾の中でもレベルの高い病院であり、透析患者の管理や、感染症についての取り扱いやマネージメントは全く日本と一緒である。病院の中で日本と違いがあるのが産後ケア病棟だろう。台湾では、お産後約1か月は産褥回復のために仕事や家事はせずに静かに過ごす風習があり、そのための病棟である。保険は効かないそうだが、ほぼ常に満床で運営されている。よく街中でも産後ケアを看板があるが、その様なところで休むそうだ。また、緩和ケア病棟の視察も行った。最上階にあり、見晴らしも良く、また色々な絵画なども掛けられ心が和むような配慮がされていた。

台北市には3000床の栄民病院があり高雄の栄民病院は台湾で2番目に大きな病院である。 今回、我々は、その高雄栄民病院とMOUを締結し、医療従事者の相互交流、人材育成など、交流をしていくための基盤を構築することができた。そしてその署名式が多くの関係者の列席の下に行われた。当方は沖縄国際医療推進協会代表理事の城間寛氏と栄民病院側は黄嶋基(本部、総秘書)が署名のセレモニーに列席した。

沖縄国際医療推進協会と高雄栄民病院とのMOU締結式の様子

*調印を終えて締結書を交換

 

3.高雄長庚記念病院

長庚記念病院は、台北、高雄そしてあと2か所に病院があり、総病床数は1万床を超す、一大チェーン病院である。その中で、高雄長庚記念病院は2番目に大きく2688床もある巨大病院である。今回の訪問に関して、副院長で、腎臓科教授の李副院長が対応して頂いた。

透析室と腹膜透析室を見学し、今後相互交流が行える様に意見交換を行った。また。また、台湾には10台の陽子線治療機を設置する予定だが、その中でこの高雄長庚病院に2台が設置される予定だそうで、丁度、ミーティングを行った部屋の窓から外を眺めてみると、その陽子線治療センターのための建設工事が行われている建築現場があり、副院長より台湾におけるがん治療の現状などを説明して頂いた。

今回の、透析患者誘導のプレゼンも行ったところ、希望者がいれば紹介をすると話していただいた。

長庚記念病院のメンバーと記念撮影

 

記念品贈呈                  交流会議の様子

4.高雄医学大学附属病院

陳鴻鈞教授は、高雄医学大学附属病院の権威的な医師であり、世界においても各国の透析事業を詳しい先生である。また、台湾のすべての腎臓科を有する病院やクリニックが加入する「台湾腎臓医学会」の前理事長でもある。今回の訪問は、プロジェクトの説明や陳教授の協力をいただき、学会のHPを通して台湾透析患者誘導のお知らせをお願いしたいところであった。陳教授は、本事業の内容や目的をよく知っており、沖縄腎臓学会のとの交流も深いとのことで、心地よく承諾していただいた。

 

高雄医学大学附属病院 陳鴻鈞教授

5.社団法人高雄市佛光腎臓関懐協会

高雄市に位置する透析患者をサポートする患者会の一つである。今回の訪問目的は、本事業の周知と台湾南部地域の透析患者が沖縄観光したい場合、情報提供の窓口にしてもらうことを打診のためでもあった。総幹事の李さんは、南部の透析患者のことをいろいろ教えていただいた。今後、沖縄旅行した患者がいたら、繋げてくれることを合意した。

高雄市佛光腎臓関懐協会

6.佑鴻旅行社

高雄市に位置する旅行社で、日本に観光客を送り出す現地アウトバウンド旅行社であった。今回は、台湾人が好まれる医薬品などの聞き取り調査で訪問した次第である。副社長やマネジャーが対応していただいた。日本の東京、大阪などのゴールデンルートに団体の観光客をよく送っていたので、台湾人がよく買われて医薬品等をいろいろ教えていただいた。今後、沖縄に透析患者の旅行も考えてみたいと意欲を示してくれた。

佑鴻旅行社入口にて

よく買われた日本の医薬品